昨年度予定していたように、今年度は学会における成果の公開と、日本の学校教員のためのワークショップの実施を行った。 1.EDiLiC第6回国際大会(Gyor-Hungary、2016年7月7日~9日)における発表(タイトル”Teachers’ Beliefs concerning Bilingualism and Linguistic Diversity in a Japanese Primary School”) 概要:多言語を扱う活動実践の前提として、日本の小学校教員(N=39)を対象に、「自身の言語学習経験と二言語併用に関する信念」「子どもの多言語性に対する態度」「教室における言語の多様性に対する意識」の主に教員の信念や価値観に関わるアンケート調査を実施し、それぞれの観点における特徴を検討した。その結果、(1)多くの教員が、児童の二言語併用や言語学習・習得に関して必ずしも適切でない信念を持っていること、(2)もし言語的少数派児童が教室にいる場合には、彼らの言語を授業で扱うことに賛成する教員は多いが、それは当該児童の言語習得のための取り組みというより、多数は児童のための人権教育ないしは異文化間理解の一環ととらえられていること(3)言語教育に関する教員の態度として、「国語」は教科目としても教授用言語としても特別の位置づけがなされていることが明らかになった。 2.教員対象の言語意識ワークショップ及び言語教員の信念と能力についてのミニシンポジウム(奈良教育大学、2017年3月25日) 概要:フランスストラスブールから招いた研究協力者であるクリスティーヌ・エロー氏とともに、教員(15名)を対象に、言語意識に基づくワークショップを開催し、多様な言語を扱う活動の意義やその教材及び授業の進め方を提示し、教員としての信念・態度・能力の変容を試みた。
|