研究課題/領域番号 |
25381264
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
梅田 素博 熊本大学, 教育学部, 教授 (40213491)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 表現教育 / 美術教育 / 光の構成 |
研究実績の概要 |
総合的学習における表現教育の観点から、芸術教科である美術表現の中で「光」を活用した教材開発及びカリキュラム研究を行った。光は、形態や色彩、材質などと同様に重要な造形要素の一つである。色料の混色は減法混色であり、色光の混色は明度が高くなる加法混色である。造形素材としての光は、輝度の高い鮮やかな発色性という視覚的効果を持っている。 光による研究では、今回はライトピクチャーを行った。ライトピクチャーの技法は、20世紀初頭の写真技術の普及や進展に伴い、また光が造形要素の一つとして認識されるようになってから、その造形的可能性が探究されてきた。例えば、バウハウスのモホリ=ナギ、またG.ケペッシュ、K.ゲルストナーがいる。日本では、高橋正人や山口正城により紹介され、万膳寛や太田順造などによってその作品が制作されている。そして、現代グラフィックデザインの分野においても、光が持つ美しさや変化などの視覚的効果に着目して、ポスターやエディトリアルなどの図版に採用されている。本研究では、ライトピクチャーの技法を実験することにより手法の一端を明らかにし、表現教育における造形要素の新しい方法を創作するための端緒とすることにあった。 本年度では研究資料の収集及び学術調査、そこから得た知見及び実験制作に基づき、各種の全国公募展、国際学術大会作品展、学会などにて教材開発及びカリキュラム研究としての作品発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ライトピクチャーの本実験を開始する前に、予備実験を調査した。基本的な原理は、暗闇の中で光の軌跡を記録することである。この前提で、下記の方法を考察した。 ①動的な光源を撮影する方法=夜景や自動車のライトなどの動きを記録するものである。撮影場所によって、光源の大小や様々な色彩表現や動きを記録することができ、意外な効果を獲得することができる。しかし、偶然性に因る、表現が類似する、輝度等がコントロールできないなどの課題がある。②花火による方法=小さい点、細い線、有機的な曲線などによるいろいろな色彩や動きがあり、意外な視覚的効果がある。しかし発火点と消火点が一定しないこと、ピントや適性露出を適合できないことなどの課題があった。③カメラを固定し、暗室の中での発光器の動きを記録する。動きを持つ機材(例えば玩具類)や人体に発光器を装着して、その動きや動作を点光源の流れで記録する方法である。この表現では、視覚的印象が限定されやすい傾向がある。④ペンライトによる方法=発光器の形状や移動方法によって、多様な変化が生まれ、躍動感のある美しいパターンを作成することができる。また同様の方法にて、具象的表現を行うことも可能であり、様々な形象を得ることができる。 このような実験考察を行った結果、本研究課題である総合的学習における表現教育について、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
事前調査の結果、本研究では、カメラを移動し抽象的パターンの実験を行う方式を採用する。理由は、カメラを固定し光源を移動させると、光の持つ躍動感などを記録することはできる。しかしながら、視覚的にはそのシャープな動勢に重点が置かれる。また、光源の形状も創作範囲が広くない。そして、これらの方法は事前調査の結果、比較的多くの作家によって表現作品が発表されていることが判明している。また具象的形状の創出は、光の持つ造形要素の特性よりも、その形状の意味に意識が捉われる傾向になる。 そのため、本研究ではライトピクチャーにおける基礎研究の観点から、幾何学的な形を光源として設定して、抽象的な移動によるパターンの創出を行うものである。カメラを移動する方法によって、光源の形状に変化を与え、従来にないパターンを試行することができると考えられる。 以上のような考察に基づき、今後においても研究資料の収集及び学術調査、実験制作等を行い、それらの知見を省察しながら総合的学習における表現教育の研究を推進するものである。そして、従来と同じように各種の全国公募展、国際学術大会作品展、学会等にて研究成果の発表を行うものである。
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