吹奏楽・管弦楽指導に実績のある大学の実技指導教員(指揮)1名,宮崎県・鹿児島県高等学校教員2名を対象とし,後述する模擬的指導場面における指導者の発話と演奏者の反応の関連について調査を行った。高音部・中音部・低音部の3つの異なる旋律からなる3重奏作品を,大学生3名により3台の電子キーボードで,強弱変化や速度変化をつけず“無表情”に演奏させ,MIDIファイル①として保存した。次に調査対象者に, 3名の演奏者に対する演奏表現指導をさせ,その様子をVTRに録画した。この指導の間に2~3回にわたり,3名の演奏者に調査対象者の指示通りに演奏させ,MIDIファイル②~④として保存した。演奏指導終了後,調査対象者に自身の演奏指導を振り返らせ,指導の意図やその効果,最終的な演奏の評価等についてインタビュー調査を行った。また演奏者にも指導者の指導を振り返らせ,印象に残った指導方法やそれに対する自身の演奏変化につて口述させた。 MIDIファイル①(指導前)とMIDIファイル②~④(指導後)から,旋律内の各音符のタイミングと長さ,強弱,速度変化についての情報を抽出し,数値化した。 現在各指導者の指導時の発話データとMIDIファイルに記録された演奏表現変化の関連について分析を進めているところである。3名の対象者は,いずれも豊かな演奏指導経験を有しているが,その指導のアプローチの仕方は,大きく異なる。どのようなタイプの指導が演奏者の演奏表現変化につながっているのか,またそれはどのような相互作用によって生じているのかについて考察を進めていく予定である。
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