本研究では,演奏表現指導方法について客観的な分析を試み,優れた指導を特徴づける要因を明らかにすることを目的としている。特に本研究では,指導者の発話と指導語のインタビュー,および演奏者の演奏データと演奏後のインタビューデータを用い,相互の関連性について分析を行った。その結果,優れた指導実績を持つ3名の指導者は,いずれもメタファーを含む間接的な指示によって演奏者の主体的な演奏表現変化を引き出そうとしていること,しかしながらこうした意図を持つ指示についての演奏者の受け止め方は場面によって異なっており,そのことがその後の演奏表現姿勢に大きく影響していることが明らかとなった。
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