研究課題/領域番号 |
25381266
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研究機関 | 名寄市立大学 |
研究代表者 |
関 朋昭 名寄市立大学, 保健福祉学部, 准教授 (20321367)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 部活動 / 学校スポーツ / 体育 / 知識基盤社会 / 21世紀 |
研究実績の概要 |
本研究では、比較文明論に依拠しながら、スポーツを単なる歴史的な要素として処理することではなく、むしろスポーツを人間の生活活動の「内殻」、精神活動(文化)の一つとして捉えなおし、ある一定地域の生活圏(文明)という「外殻」から通観しようとするものである。人間の自由な生活活動や精神活動という観点から、スポーツや教育を文明的な要素として捉えてみた場合、要素を問題とするよりは要素間の関係性の方が問題ということが示唆できる。文明の要素をどのように組み合わせ、プログラミングするのかという点にアイデンティティのかなりの部分が存在する。つまり、欧米のスポーツという文明要素を抽出し、それを、日本文明の中に投げ入れても機能しない。なぜならば、教育制度、家庭環境、社会福祉制度などがあまりに違いすぎるからである。そこで、日本、日本人にとってのスポーツ、特に学校スポーツというものが、日本文明の中でどのような役割や意味をもっていたのか考察を行ってきた。まずは、文明装置としてのスポーツについて整理しながら、スポーツがもつ文明的意味を理解するために、哲学、倫理学などの視点も加えて考察し、近代スポーツが日本へ移入した際、日本に対し、どのような影響を及ぼしたのか検討してきた。続いて、国際的に、子どもたちのスポーツ制度を、学校や地域社会との関係で類型化し、「学校型」「地域型」「学校地域型」を抽出した。日本は、アメリカなどとともに、「学校型」に分類されるが、中学・高校生に全国大会があるなどの点で、アメリカとも異なっているが分った。そして、21 世紀の日本の学校スポーツの方向性について検討し、21 世紀は知識基盤社会といわれているが、部活には一定の教育的な意義が認められているが、今のままでは「勝利至上主義」から脱却することもまた困難であるとも考えられる。こうした新しい視点から、今後の方策が徐々にみえてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
部活動あるいは学校スポーツは、戦後、広範に日本のスポーツを支え、ワールドカップやオリンピックの選手供給源として機能し、野球の甲子園大会などを通して人気を博してきたが、実は、国際的には極めて珍しいシステムであることを、ほとんどの日本人は知らない。平成25年度、平成26年度の調査から、今日まで形成されてきたわが国の部活動システムの全体像を明らかにすることができた。そして、これまでの部活動システムに対するアンチテーゼともいえる貴重な学校事例を俯瞰しつつ、21世紀の部活動が目指すべき理想像の輪郭が少しずつ見えつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究計画は以下の①②の手続きで進めていく予定である。①平成26年度までに設計することができた「21世紀型部活動システムモデル」と、これまでの筆者の研究成果を比較検討する。比較検討の方法としては、平成26年度に提起した設計モデルの概念が筆者の先行研究である「部活動のない公立学校」と、どの程度の適合性があるのかについて検討する。②実用可能な21世紀型部活動システムモデルの構築として、研究協力校へ21世紀型部活動システムモデルについて報告を行う。そして、研究協力校がシステムモデルと不適合する部分、つまり役割不足や機能不全なところを教育現場と意見交換することにより、実用可能な21世紀型部活動システムモデルを最終的に構築していく。
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