本研究の目的は、第一に欧米の教育機関で主流になりつつあるPBL(Project‐Based Learning)が、もたらす教育効果を事例研究により解明すること。第二にわが国の高等教育機関(大学)で本格的な導入が始まったPBLの実施状況を調査し、中学校・高等学校の「総合的な学習の時間」のカリキュラムデザインの基軸に、PBLの学習形態を導入する可能性と教育効果を検証することであった。 そのため、国内外の中・高校および大学を調査研究(米国の中・高のPBL訪問調査校は、2年間で18校と1支援組織)し、次のような研究結果を得た。①日本では、グループワークなど能動的学習を取り入れた教科教育の開発は見られるようになってきた。しかし、一部例外(国際バカロレア認定校、スーパーグローバルハイスクール)を除いて、未だ広がりは見られず、課題は多い。②米国では、PBLを基軸に据えた公設民営型のチャータースクールが、過去7年ほどで倍増し、2014年現在、全米に約6500校、生徒数250万人以上という隆盛を見せており、米国の初等、中等教育の能動的学習は、加速化している。③米国でのPBLやアクティブラーニング隆盛の背後には、カリキュラム開発や教師教育を支援する各種のNPO組織があり、訪問調査した結果、PBL活動を支援するツール開発、手厚い教師教育などPBLを推進するための様々な仕掛けが準備されていた。 以上から、今後、能動的学習を日本の初等・中等教育で推進するために、海外のPBL実施校や支援組織の持つノウハウや支援ツールを解析し、その知見を活用し、①日本に適したPBL型の総合学習の全体構成を開発すること、および②プロジェクト学習を支援することができるアドバイザー(学習支援者)養成の研究を行うことが重要であり、日本の学校教育を実質的に能動的学習への転換するためには、この二つを開発することが、次の研究の目的となる。
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