研究課題/領域番号 |
25381283
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | くらしき作陽大学 |
研究代表者 |
宮里 智恵 くらしき作陽大学, 子ども教育学部, 教授 (70646116)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 道徳教育 / 愛他性 / 思いやり・親切 / 道徳教育プログラム / 愛他的葛藤場面 / 非表出的向社会的行動 |
研究概要 |
本研究の目的は日本の小中学生の発達段階に即した愛他性育成の道徳教育プログラムを開発することである。平成25年度は愛他的葛藤場面における道徳判断に関する国内外の研究動向を検討し、以下の通り研究の理論的枠組みを明確にした。 愛他性は学術的には順社会的行動、向社会的行動、向社会性などの用語でも説明され、米国においては1960年代以降、我が国においては1970年代以降、その生起過程や発達、育成のあり方などについて研究が進められてきた。愛他的葛藤場面における道徳判断に関しては、アイゼンバーグらが発達の6段階説を提唱し、日本の子どもの道徳判断も概ね6段階を経て発達することや日本の子どもは「情緒的動機」を判断理由とする期間が比較的長いことが明らかにされた。つまり愛他的葛藤場面における道徳判断に関し、日本の子どもに特有の発達の様相が存在することが明らかになった。 愛他性は日本の学校の道徳教育においては内容項目「思いやり・親切」で取り扱われており、各出版社の副読本によれば、愛他的葛藤場面では相手を思いやり、親切な行動を行うことが重視されている。一方、近年、小学校高学年以降の子どもに、相手を直接的には助けない「非表出的向社会的行動」があることが明らかにされた(山村 2011)。山村(2011)に従えば、小学校高学年以降の愛他性育成をねらう道徳教育には「非表出的向社会的行動」も視野に入れた多様性が必要と考えられる。しかし、この点についてはまだ十分に検討されていないことが明らかになった。 以上のことから、本研究においては小学校高学年以降の「思いやり・親切」をテーマとした道徳授業に「非表出的向社会的行動」を含めて検討することとした。これにより、より子どもの発達の実態に応じた道徳プログラムが開発できるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書では平成25年度は次の2つの実施を計画していた。①愛他的葛藤場面における道徳判断に関する国内外の研究動向の検討を通して、研究の理論的枠組みを明確化する。②小中学生に対する愛他的葛藤場面における道徳判断に関する質問紙調査を実施し、日本の子どもの愛他性の発達の様相を明確化する。 これらのうち、①については実施できたが、②については平成25年度中には実施できなかった。その理由は、①の愛他的葛藤場面における道徳判断に関する国内外の研究動向を検討する中で、小学校高学年以降の子どもに「非表出的向社会的行動」の存在が明らかになり、②の質問紙調査の内容を「非表出的向社会的行動」に関するものを含めたものに、一部変更する必要性が生じたためである。 一方、平成26年度に予定していた小中学校の道徳の副読本の内容の検討は一部前倒して実施した。よって、本研究は当初の計画についておおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、平成25年度に実施予定であった質問紙調査を早期に実施しその研究成果を公表する。また、当初の計画通り、平成26年度には小中学生の愛他性の発達に照らし、小中学校の愛他性育成の道徳資料について内容と配列を検討する。 平成27年度以降の研究計画は現在のところ、申請書通り実施する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請書の段階では平成25年度に質問紙調査を実施することにしており、そのデータ入力・分析・グラフ作成などための費用を計上していたが、平成25年度は質問紙調査に至らなかったため。 平成26年度は、平成25年度に実施できなかった質問紙調査を実施する予定で、調査のデータ入力・分析・グラフ作成などに使用する計画である。
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