平成28年度の研究の目的は、小学3年生から中学3年生の子供が、被援助の立場にありながら援助を受けることを望まない理由を発達的に検討し、その結果をもとに道徳科の「思いやり・親切」の教材と学習指導案を開発し提案することである。 研究の結果、①道徳的葛藤場面により「援助を望まない理由」に違いがあること、②場面により、ある「援助を望まない理由」が顕著に表れる学年段階があること、が明らかになった。これを受け、道徳科「思いやり・親切」の教材と学習指導案を開発した。 今後はこの教材と学習指導案を用いて各学年段階で実際に道徳科の授業を行い、児童・生徒が「思いやり・親切」についてどのような思考をするのかを、実践レベルで発達的に検討する必要がある。
平成25年度から4年間の継続的研究の結果、小学3年生から中学3年生までの児童生徒において、特に「表に表れない思いやり行動の示し方」や「表立った思いやり行動を受けたくない」場面や年齢段階が存在することが明らかになった。特に中学2年生、3年生は、「校舎の陰で泣いている場面」において「相手のことを思えばこそ表立って思いやり行動をしない」「自分も表立って援助してほしくない」とする割合が、小学生より多いことが明らかになった。小中学校の道徳科では、「考え、議論する道徳の授業づくり」が求められていることから、本研究で明らかになった知見を生かし、「思いやり」をテーマとした授業の教材開発と授業展開の提言を行った。
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