研究課題/領域番号 |
25381289
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
縣 秀彦 国立天文台, 天文情報センター, 准教授 (30321582)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 学習指導要領 / 高等学校 / 理科 / 知の総合化 / アクティブラーニング / 日本学術会議 / 中央教育審議会 / 総合科目 |
研究実績の概要 |
本科研費を旅費や調査研究費の資金の一部とし、日本学術会議の科学と社会委員会「科学力増進分科会」の下に「高校理科教育検討小委員会」を設置した。この小委員会は須藤靖委員長、縣他が幹事を務め、13名の委員から構成されており、高等学校の理科教育に関する現状と問題点を海外調査や過去の諸調査等から明らかにし、高等学校における次期学習指導要領の改定に向けて、中央教育審議会や文部科学省への提言書を取りまとめることを目的としている。平成26年4月より毎月1回の会合を重ねており、現在、提言書の骨格が固まり、原稿の執筆段階に入っている。
高校理科教育検討小委員会では、今日の学習指導要領の中身を精査するとともに、これまでの理科カリキュラムの推移を調べ、海外の動向、特にイギリスと韓国の理科カリキュラムについて専門家を交え情報の共有と討論を行った。これらの成果については、平成26年11月9日に日本科学未来館においてサイエンスアゴラ参加企画としてシンポジウムを実施し、50名を超える参加者と共有し中身を深めることが出来た。
次期学習指導要領においては、科学技術立国として必要な科学力をさらに向上させる内容であるとともに、理工系に進学しない高校生にとっても魅力的かつ不可欠なカリキュラム内容は何かを本研究においては主に検討した。そして、その実現のためには、学習対象が明確であること、生活と学習内容の関わりが意識できること、知識ではなく科学的な考え方を育成する内容であることが重要であると結論づけた。また、現行のように物・化・生・地の分野別に学習するのではなく、積極的に科目間の関わりを取り入れ、様々な視点で科学を見ることで、効率的に科学リテラシを涵養できると考えた。このような総合的な理科の科目を必修科目として高校1年生段階で設置することを提案し、モデルとなるカリキュラム案を今年度の成果として作成することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高校理科教育検討小委員会の設置と、平成26年度中に主たる共同研究者(松本直記)が国立天文台特別客員研究員として国立天文台に滞在し本研究に専念できる環境が出来たことから、当初に想定していた複数の班による研究遂行を中断し、日本学術会議の委員を主体とした研究遂行グループに研究体制を変更した。このことにより、作業が一元化され効率よく研究を進めることが出来た。
本研究課題の次期学習指導要領における高等学校での必修理科科目の設置については、日本学術会議の小委員会委員間では合意形成が行われたが、その実施方法としては従来の物化生地の基礎科目4つをそれぞれ必修とする案と、本研究遂行者である縣他が主張する総合的科目の新設との間で両者、調整は付かず、提言書においては両論併記で記述することとなった。このため、知の総合化を目指す総合的理科基礎科目の実現可能性についての更なる検討や基礎研究が重要である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、日本学術会議「高校理科教育検討小委員会」の活動と連動して、本研究課題の取りまとめでもある「提言書」を発表することを最終目的とする。具体的には以下の作業を主に実施予定である。 (1)日本学術会議「高校理科教育検討小委員会」の幹事として、本研究遂行を適切に制御する。平均月一回の会合と、メールでのやり取りにより「提言書」を年度内に取りまとめる。 (2)本研究成果を共有し、さらに深化させるため、シンポジウムを年度内に開催する。 (3)昨年度に引き続き、英国、韓国をはじめEU諸国や東アジア等外国の高等学校理科カリキュラムについて調査する。 (4)天文教育研究会(8月、北海道大学)、国際天文学連合総会(8月、ハワイ)等で成果を発表するとともに国内外の共同研究者と「提言書」完成に向けて意見交換を行う。 (5)提言書の発表の後、新しく得た知見については論文として取りまとめ投稿する予定。
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