本研究課題は、理想的かつ実現可能な科学教育カリキュラムを、特に高等学校教科理科において検討・考察するものであり、具体的には3年間に渡って物理・化学・生物・地学の従来の科目4分野のうちの高校生全員必修の学習要素とは何かを検討した。さらに諸外国の動向を調べ日本との比較検討を行った。次期学習指導要領改訂時における全員必修の理科科目設置に関しての検討のための基礎的な研究を実施した結果、最終年度には、日本学術会議科学者委員会・科学と社会委員会合同広報・科学力増進分科会高校理科教育検討小委員会において、提言を取りまとめ発表することに寄与することが出来た。 提言「これからの高校理科教育のあり方」(2016年2月8日)は、日本学術会議のウェブページから閲覧可能であり、次期学習指導要領編成に利活用されることを強く期待するものである。提言の概要は次の通りである。 (1) 単なる断片的知識の詰め込みでなく、理科の4領域が相互に関連しながら現代社会に密接に影響を及ぼすことに着目して、科学の意義と社会におけるその役割を理解し、課題解決型の能力が育成されるように高校理科の内容を見直すべきである。具体的には、現在の領域別の4つの基礎科目を再編し、「理科基礎(仮称)」という必修科目を新設すべきである。 (2) すべての高校生が、その進路に関係なく、物理・化学・生物・地学の基礎事項を学び科学リテラシーを身につけることができるように、「理科基礎(仮称)」には、少なくとも6単位、できれば8単位を割り当てるべきである。またその実現のために、理科4領域の基礎事項を万遍なく教えることのできる高校理科教員の養成体制を早急に整えるべきである。さらにこの「理科基礎(仮称)」は、大学入試センター試験(あるいはその後継として想定されている統一試験)における必受験科目と位置づけるべきである。
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