研究課題/領域番号 |
25381295
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研究機関 | 筑波技術大学 |
研究代表者 |
石田 久之 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 教授 (50151379)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 留学 / 障害学生 / 国際情報交換 / 東南アジア / 台湾 / マレーシア / シンガポール |
研究実績の概要 |
本研究は、東南アジア地域の大学等に学ぶ障害学生の留学の実態を調査し、この地域の高等教育機関に学ぶ優れた障害学生の日本への留学を促進する方策を検討することを目的としている。 東南アジア諸国の学生が日本への留学を考えた場合,大きな課題となるのは以下の三点である。1. 留学情報を得ることの困難さ: 留学に関する情報について、大学がこれを積極的に収集し、学生に情報提供している状況ではない。大学の教員は、自身の留学等については意識的に情報収集を行なっているようであるが、学生を送り出すための留学情報は殆んど持っていない(マレーシア大学教員より)。2. 言語(日本語)習得の困難さ: 調査対象国への日系企業の進出により、就職を考えた場合、日本語ができると有利との判断が学生にあり、またこれを受けて、一部の大学では日本語教育を積極的に進めている(ベトナム教員より)。 学生の日本語能力については、勿論個人の能力差はあるが、4年間で日常会話ができる程度で、専門的な議論などは難しいとの意見(台湾教員より)から、学習中の内容に関し突っ込んだ議論ができる学生(ベトナム健常学生より)まで様々である。3. キャリア形成における位置づけの難しさ: 留学にどの様な意味があるのか。日系企業に勤めるとしても、日本への留学までは必要か。障害者にとっての留学とは何か。わざわざ外国に行って、困難が予想される生活や勉強をする必要があるのか。これらの疑問が大きく生じている(調査対象国を問わず障害学生より)。採用において企業担当者はあまり留学経験を考慮しないという指摘もあり(シンガポール教員より)、このようなことから留学を積極的に考えない学生も少なくないと思われる。 平成25・26年度に得られた以上の結果を踏まえ,平成27年度は留学情報提供の在り方と国内外における障害学生留学環境の整備について考察を行なっていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、東南アジア地域の大学等に学ぶ障害学生の留学の実態を調査することが目的であるが,平成26年度は前年度からの繰り越しとなったミャンマーとシンガポールの調査を含め,7か国から83名の障害者の聞き取りデータを得ることができ,予想以上に研究は進展していると考えている。 一方,大学当局に対しての(1)障害学生数、障害のある留学生数、障害支援関係予算など、(2)支援ポリシー(考え方)、支援内容、支援組織、支援担当者、教員対応、支援者養成、留学への対応などの調査については,必ずしもすべての項目についての回答を得られていない。大学当局が実態を把握していないことが理由である。これらについては平成27年度での対応となる。 以上を総合的に判断し,本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
台湾、ベトナム、マレーシア、シンガポール、インドネシア、タイ、ミャンマーにおける障害学生の留学への意識について、まだ全ての調査結果の整理が済んでいないのでこれを進めることになるが,障害学生の支援,留学,キャリアなどについて,調査対象国間,大学間の違いが大きいことが,強く裏付けられるものと思われる。結果として情報提供の方法なども国により大きく異なることが予想され,その効率性も環境整備における大きな要因となるであろう。 また,本調査において,東南アジア諸国が必ずしも我が国と同じ教育形態,組織,内容ではないことが明らかになってきており,学生の相互交流においてどの様にマッチングを図るかも大きな問題である。 平成27年度は更に障害学生の個人データを増やすとともに,大学等への調査協力の働きかけを強化し,現在得られていない未回答項目をできるだけ少なくしていくつもりである。 なお,これまでの2年間の調査において,多くの大学等の研究者・教員・指導員等と情報を共有できるようになったが,本研究代表者を中心としたこれらの組織化と拡大,これによる留学情報の共有と障害学生への提供もあわせて検討するつもりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
マレーシアのマレーシア盲人協会では44名の視覚障害学生のデータが得られたなど,「現在までの達成度」に示したように予想以上のデータが集まっており,これらの分析にかなりの時間がかかっている。このため,マレーシア他地域(ジョホールバル)の大学やシンガポール・台湾などへの調査の時間が取れなくなった。これが次年度使用額が生じた理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の当初の研究計画では,多くの国を回ってのデータ収集は考えていなかったため時間的には多少余裕がある。できるだけ年度前半において平成26年度に調査を行なえていない大学等の調査を実施する予定である。次年度使用額は主にこの調査のための旅費に充てる。
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