研究の最終年度である平成27年度においては,平成25・26年度の補完的調査を主に台湾,更にベトナム・マレーシアにおいておこなった。台湾では,2000年より障害学生が8名以上の大学は支援センターを設置することが義務付けられている。台湾高等教育界をリードする国立台湾大学において聞き取り調査対象校として調査を実施した。東南アジア各国10大学程度を調査したが,組織的な実態把握ができている大学は初めてである。国立台湾大学には,2015年278名の障害学生が在籍しており,在籍率は0.8%程度である。障害別にみると,聴覚障害72人,肢体不自由50人,自閉症38人で,視覚障害は14人,このうち盲は2・3人である。台湾の支援体制は,例えば視覚障害学生の場合,学生が個別にセンター大学である淡江大学に支援申請を出し,これを検討の上,必要な予算を学生に措置するという形をとっている。これにより障害学生が在籍する大学の予算面での負担はほとんどない。この上で,大学の支援室が,生活面や心理面でのカウンセリングなどを行っている。我が国では個々の大学に対応が任せられており,台湾のような方法も一考する価値があると思われる。ところで,台湾大学には上記の通り300名近い障害学生が在籍しており,この5年間を見ても200名以上が常に在籍しているが,留学した障害学生は一人のみである。留学を希望しない理由は,障害があるが故の生活面の不安,また,日本文化への関心はあるが,それは留学しての学問的関心とは異なること,自国内のIT産業の隆興など,敢えて外国に行ってまでの学修の必要はないとの判断である。 ベトナム・マレーシアの障害学生については,多くの場合,一度大学を卒業し,就職など自立の道を確保した上で,改めて海外留学の道を探すのが多いようであり,学部在学中の留学は,希望はあるものの,ほとんど行われていないというのが実態である。
|