研究課題/領域番号 |
25381300
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
武居 渡 金沢大学, 学校教育系, 教授 (70322112)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ろう学校 / 学校図書館 / 実践 / 日本語力 / 評価 |
研究実績の概要 |
ろう学校の学校図書館の実情や学校図書館が抱える問題や課題について、アンケート調査から、1)蔵書数の少なさ、2)聞こえない児童生徒の言語力と借りる本とのミスマッチ、3)学校図書館での手話の活用、などが浮き彫りとなった。 これらの問題を解決するために、平成26年度は、手話を教育に積極的に取り入れ、英語とアメリカ手話のバイリンガル教育を行っているKendall Demonstration Elementary SchoolおよびMaryland School for the Deafの学校図書館を参観し、また関係者に対して面接調査を行った。この調査のうち、我が国のろう学校の学校図書館改革に応用できるような事柄として以下の点があげられる。 第一に、本の難易度を250語レベル、500語レベル、1000語レベルのように分類し、本の背表紙に難易度がすぐにわかるシールを貼っていたことがあげられる。個別指導の中で、各自の英語力の評価をしており、自分の言語力にあった本を選ぶことができる。また、民間の業者がアメリカで出版されるほぼすべての児童書の難易度を評価しており、それらを用いていた。第二に、授業で用いる図書については、本の概要を理解しているかどうかをチェックできるクイズが用意され、ただ本を読むだけでなく、これらのクイズに回答することで、確実に理解しているかどうかを教師や本人がチェックできるような教材が作成されていた。第三に、低学年用の図書には本の内容を手話翻訳したビデオやDVDが作成されており、手話による絵本の読み聞かせもなされていた。また家庭で手話による絵本の読み聞かせができるよう、Shared Reading Projectを立ち上げ、家庭支援も行われていた。 平成27年度は、我が国のろう学校図書館の改革を実践する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4年の期間のうち、最初の2年間で我が国のろう学校の学校図書館の現状を把握し、何が課題であるかを明らかにした。また、これらの課題を解決するための資料として、先進的な実践を行っているアメリカのろう学校を参観し、関係者に面接調査を行い、また資料を収集したので、これらを材料に、平成27年度、28年度は3校ほどのろう学校に依頼し、学校図書館の改革を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、3つのろう学校の学校図書館の改革を行う旨、学校には内諾を得ている。まず蔵書数の少なさをカバーするために、県立や市立図書館との連携や機関貸出制度などを使って、蔵書数の少なさをカバーできるよう、ろう学校と協議しながら図書館環境の整備に努めたい。次に、ろう学校にある図書の難易度調査を行う。日本語文章の難易度を評価できるソフトウェア開発に取り組んでいる工学系の研究者と連携し、図書の難易度評価の方法を今年度中に決定したい。図書の難易度評価の方法が決定した後、ろう学校に在籍する児童生徒の日本語力を評価し、貸し出しする図書とのマッチングを図る方策をろう学校と一緒に考えていきたい。
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