ろう学校図書館が抱える課題として大きく、1)在籍児童生徒数の少なさと年齢の幅の広さから児童生徒のニーズに合った書籍を用意できないこと、2)児童生徒の言語力と読むべき本のマッチングがうまくいっていないこと、3)幼児向けの本の手話翻訳動画の必要性、4)本を読みたくなるような仕掛けづくり、の4つが挙げられた。これらの課題に対して、いくつかのろう学校に対して、図書館改革の提案を行い、部分的に実践を行ってもらった。 1)在籍児童生徒数の少なさと年齢の幅から児童生徒のニーズに合った書籍を用意できない、という問題に際しては、ろう学校を移動図書館のストップスポットにしてもらうことや、県立図書館などから機関貸出を行うことなどを提案した。2)児童生徒の言語力と読むべき本のマッチングがうまくいっていないこと、については、本の難易度が一目でわかるようなシール等を貼るなどの提案を行った。しかし、本の難易度を測定する方法の提案については課題が残った。3)幼児向けの本の手話翻訳動画の必要性、については、様々な団体や学校が絵本の手話読み聞かせ動画や手話翻訳ビデオなどを作っているので、これらのデータを整理し、入手可能なものは入手した。4)本を読みたくなるような仕掛けづくり、については、課題図書の指定と内容理解ができているかどうかを確認するクイズを作ること、先生や保護者推薦の本を定期的に紹介することなどを提案した。 これらの提案を、いくつかのろう学校で部分的に実践してもらった。成果を実証的に検証するまでには至らなかったが、これらの実践がろう学校の図書館の改善につながったことは確認できた。今後の課題としては、これらの実践を継続的に行うことのできる組織をどのように作っていくかということが挙げられた。
|