研究課題/領域番号 |
25381309
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
大竹 喜久 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (00304288)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ビデオヒーローモデリング / 自閉症スペクトラム / 日常生活スキル |
研究実績の概要 |
今年度は、ある知的障害特別支援学校小学部6年に在籍する1名の自閉症スペクトラム障害男児(以下、B児と記す)を対象として、ビデオヒーローモデリング(VHM)を適用し、その効果を検証した。新版K式発達検査では、認知・適応領域4歳5か月、社会・言語領域4歳1か月であった。 担任教師との話し合いの結果、トイレ使用時において、①ハンカチを用いて手を拭くこと(以下、「手拭」)、②上靴を脱いだ後、靴のマークの上に揃えて置くこと(以下、「靴揃え」)、③臀部を隠して排尿すること(以下、「ズボン下げ」)、④排尿後、シャツをズボンの中に入れること(以下、「シャツ入れ」)を標的行動として取り上げた。 ヒーローモデリングビデオは、①B児にとってあこがれの存在であるイニシャル・ディーの主人公、藤原拓海が、B児が使用するトイレに現れる、②藤原拓海が解説をしながら標的行動を正しく演じる、③藤原拓海がB児に対し「藤原拓海のようになろう」と呼びかける、といった流れで構成された。ビデオの長さは約1分であった。ビデオ作成に際しては、①B児が使用するトイレで大人モデルが標的行動に従事するシーンをビデオ撮影する(その際、顔から下の部分のみ撮影する)、②After Effects CS6のロッドブラシ機能を用い、イニシャル・ディーの映像から藤原拓海の顔の部分の動画を切り取る、③After Effects CS6を用い、①の画像に②を合成する、④ビデオスタジオ12を用い、③の画像に音声を合成する、といった手順を用いた。ヒーローモデリングビデオは、B児が標的行動に従事する直前に担任教師によって提示された。 行動間の多層ベースラインデザインを用い、「手拭」→「靴揃え」→「ズボン下げ」→「シャツ入れ」の順にVHMを導入した結果、どの標的行動においても、VHMを導入して初めて著しい行動変容が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回、データを分析し、信頼性測定まで含めて論文の形としてまとめられた事例は1つであったが、①データ収集をすでに終え、VHMの効果が確認されている事例が1つ、さらに、②データ収集をすでに終え、VHMでは効果が見られず、別の手立てによって効果が確認された事例が1つある。3年間で4事例(それぞれの事例において、少なくとも3つの行動変容を確認するデザインを用いる)を収集することが目標であるが、このペースで行けば、次年度終了するまでには4事例が得られるものと確信している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究の結果、仮説的にではあるにせよ、ビデオヒーローモデリング(VHM)は「対象児がヒーローのしぐさを模倣する形で興味を示すときに効果がある」ということが導き出された。来年度は、そうした子どもに対象をしぼり、VHMの効果を確かめたい。 また、今年度、ヒーローモデリングビデオ作成マニュアル案を作成したので、来年度はそれを用いて、数人の学生にビデオ作成を行わせ、数事例に関与させる中で作成時間がどのように短縮するのかを計測したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文の作成が間に合わず、英文校正のための費用の一部が使えなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
英文校正(1件)で使用する。
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