昨年度予定していた3年間の成果発表が職務の都合で出来なかったため、研究期間を1年延長し、ビデオヒーローモデリング(VHM)の効果研究に関する成果発表を行った。学会発表の日時、場所は、2016年11月30日アメリカ合衆国ミズーリ―州セントルイス市ユニオンステーションホテル、学会名は、The Association for Persons with Severe Handicapsであった。発表内容は以下の通りであった。6名の対象児の内、5名は知的障害のある自閉症スペクトラム障害児、1名は知的障害児であった。VHMでは、子どもにとっての特別な興味の対象が標的行動を示すビデオを、その行動が求められる場面の直前に視聴させた。標的行動は日常生活スキルに関するものであり、どの行動についても、すでにスキルとしては獲得しているが何らかの理由で(ほとんどは課題からの逃避・回避)実行しないというものであった。実験デザインとしては、行動間の多層ベースライン法や反転計画法が用いられた。結果は、6名の内5名については著しい改善が見られた。改善されたケースの中には、標的行動を示しながら「○○(ヒーロー名)みたい」「○○(ヒーロー名)のようにやってみるぞ」と発言する者もいた。効果が確認されたすべてのケースにおいて、対象児は日常生活の中でヒーローの真似をする、あるいはヒーローになったつもりになる場面が見られた。単なる興味の対象ではなく、その対象のようになりたいという思い、あるいは、その対象のようになることに価値を覚えるような子どもに対して、VHMは確実に効果があることが示唆された。
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