研究課題
本研究の目的は、以下の2点である。(1)非行化した被虐待児(児童自立支援施設入所者)の神経学的特徴をMRIを用いて評価する。同時に、行動・情緒特性を多面的に評価し、被虐待の影響を明らかにする。(2)児童自立支援施設(実際の夫婦が、非行化した児童青年を家族的雰囲気の中で治療教育的に矯正を目指す施設)に入所した子どもたちの治療効果を評価し神経科学的基盤に立脚した治療法を提案する。 入所時のアセスメントでは、70%以上の入所児が何らかの被虐待経験を持っていた。また、ADHD-RSの評価においても顕著な問題性を抱えていた。MINI-KIDの構造化面接では、素行障害のみならず、多様な精神障害を合併していることが明らかとなった。総合的に評価すると、CBCLのような行動や情緒の尺度においても、精神医学的評価尺度においても、相当程度深刻な状態で、入所していることが実証された。入所時と退所時でのCBCLの比較では、対応のあるt検定で解析したところ、顕著な改善傾向が認められた。なお、WISC-4によるIQの評価では、平均で20以上上昇していたことが確かめられ、行動面の改善のみならず、全体的な認知機能も顕著に改善していることが明らかとなった。なお、自己評価式においても、寮長先生による他者評価においても、改善度に関連があることが明らかになった。MRIの評価では、サンプル数が十分でないため、統計学的な有意差が検出出来なかったが、両側の海馬および右側の扁桃体に体積変容があった。これらは行動や情緒における変容と関連していると考えられ、今後丁寧に解析していく予定である。
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