研究課題/領域番号 |
25381321
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 十文字学園女子大学 |
研究代表者 |
阿子島 茂美 十文字学園女子大学, 21世紀教育創生部, 教授 (70590082)
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研究分担者 |
漆澤 恭子 植草学園短期大学, 福祉学科, 教授 (20558340)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 発達性読み書き障害 / 大細胞・小細胞系障害説 / 読みやすい文字 / 学習支援ツール / 教材開発 |
研究概要 |
(1) 発達性読み書き障害者のアセスメントと聞き取り調査 被験者(成人3名)に対して心理的アセスメント、生育歴、形態認知課題テスト等を実施した。文字習得に困難があり現在も読みに困難を抱えるが、独自の読みの工夫による努力性文字認識で、日常の社会生活を送ることが可能であった。読みやすい文字として丸ゴシック(12ポイント)との先行研究がある。(2)読み書き障害に対する大細胞・小細胞系障害説の検証追実験 ランダムドットを使用し、明暗・コントラスト・動き・方向をかえた文字認識に有意差があるか否かの実験を行った。今回の実験からはいずれも読みの健常者との間に有意差が認められなかった。そのため①知覚心理学的視点から文字(ひらがな、カタカナ、数字、漢字)を明暗、サイズ、コントラストを変えて瞬間呈示する実験を行った。さらに図形認知として地と図、錯視とビジュアル・スパンの実験を行った。結果は文字提示では一部画数の多い文字の読みに多少の困難がみられたが、ほぼ読むことができた。錯視に関しても一部の錯視図形に困難があるものの錯視が起こることが確認された。地と図の分離でも多少のバラツキがあるがおおむね通常の見え方であった。ビジュアル・スパンでは確実な読み(数字)は3桁までが可能であった。困難の要因として、複雑な構造の図形の全体把握の困難、図形の一部分へスポットライトのように注意が向きその箇所が強調される、鋭敏に輝度・向き・色をとらえ強調されること等が推測された。実験後、被験者に文字や図形の見え方の聞き取りを行ったところ、ゆがむ、奥行が出てくる、かすむ、凹む、疲労感、さらに画面の傾斜・顔の位置により奥行や角度に変化が生じるとの報告を得た。これらは呈示条件が一定ではなく、その時の体調の状態など多少の変化で生じる不安定さがあった。知識からの推測等の努力性文字認識を裏つけたものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大細胞・小細胞系障害説の実験において 当初実験方法としたランダムドット使用における実験で有意差を得ることができなかった。そのため、26年度計画の一部を繰り上げ、文字認知の特徴を地と図等の知覚心理実験を行った。今後ランダムドット使用を含め、各年度の計画を見直すことが必要となった。
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今後の研究の推進方策 |
当初実験方法としたランダムドット使用実験で有意差を得ることができなかったことにより、今後の研究計画として、今年度予定していたランダムドットを使用しての立体的に見える文字呈示の識字率変化実験は行わず、「読み書き障害者のより読みやすい文字」の呈示方法に焦点をあて、教具・教材の開発の研究を進める。知覚認知実験で、図や文字の見え方に多少の特徴が確認できるが、被験者より個人内でも条件が一定しないとの報告もあった。色、明暗、サイズ等個々の視覚認知特性に合わせ、対応可能な要素を組み合わせた教材教具の作成を試みたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
26636円が次年度使用額となったが、価格の変動などにより生じたもので予算全体からみて、大きな変更はなかった。 研究予算全体からみて大幅な金額の変更ではないため、次年度全体予算計画の中に組み込み使用する。
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