研究実績の概要 |
本研究は学習障害の中核である読み書き障害の学習支援ツール開発を目的としている。 平成27年度は(1)独自フォントの開発と(2)読み書き障害のための教材アプリ「かんじダス」の開発を行った。(1)については発達性読み障害者が読みやすいといわれているフォントのゴシック体を基に文字習得の初期段階においては手書きに近い文字を使うことが望ましいと考え、均一な太さで親しみやすい「渡部フォント」を作成した。平成26年にひらがな、象形文字を作成したが、平成27年は形声文字を加えた。大学生を対象とした明朝体・教科書体等の代表的なフォントとの比較調査を行ったところ最も柔らかく,自身の書字と似ているとの評価を得た。(2)読み書き障害のための教材アプリ「かんじダス」の開発では漢字が表語文字であることを体感できる、象形文字を用いた「漢字―絵合わせ」(平成26年度作成)と、漢字が要素の組み合わせであることを体感できる、形声文字などを用いた「漢字パズル」(平成27年度作成)の2つのゲームで構成した。「漢字パズル」は、漢字がばらばらになるアニメーションが表示され、次にばらばらになった各部分を元の位置に指で動かし、漢字を完成させる仕様である。漢字は「天気」「自然」「場所」「人」「色・形」「学校」「動き」のカテゴリ別に分類し提示した。通常の学級の児童31名を対象に本アプリの実施と使用感の検証を行った。「漢字―絵合わせ」と同様に楽しい、使いやすいとの高評価を得た。また漢字成績別群分けによる検討を行ったが、下位群において高度な漢字にチャレンジしたいという意欲につながる発言があり、発達性読み書き障害児への有効性が期待された。本アプリは学習への抵抗感を少なくし、楽しく自然に文字(漢字)学習ができる学習支援ツール作成という本研究の目的を具現化していると考える。本アプリはdyslexia.16mb.comで公開をしている。
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