研究課題/領域番号 |
25381323
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
原 惠子 上智大学, 外国語学研究科, 准教授 (00583741)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 読み障害 / 早期発見 / 音韻意識 / 音節とモーラ / 特殊モーラ |
研究実績の概要 |
本研究は、幼児期に読み障害のリスクを発見する検査開発の基礎資料をえるため、就学前・後の数年間の、読みとそれに関連する能力の関係を明らかにすることを目的としている。本年度、予定した調査先の都合により、縦断調査開始を延期せざるをえなかったので、①年中児~小学校2年生を対象とし、モーラ意識の形成過程と特殊モーラの特性を検討するために実施した調査結果をまとめ、②就学後の読みの発達の縦断調査を継続して行った。 ①の調査について:直音のみで構成された非語と特殊モーラ(撥音、長音、促音、二重母音)を含む非語を用いて、音韻分解の様子を調べた。モーラ意識は学年の上昇とともに増加し、年長児・小1間に有意差が認められた。モーラで分解する反応数は、特殊モーラ間で差があり、二重母音・撥音>長音>促音の順で減少することが見出された。学習場面では、日本語の語音は、直音とそれ以外(特殊モーラ)に大別され、特殊モーラはまとめて一括りで扱われることがほとんどであるが、特殊モーラはモーラ意識の発達から見ると、二重母音と撥音、および、長音と促音の2つに大きく分けられ、前者の意識の方が早く形成されることが明らかになった。このことは音韻構造の自立性から説明されうることである。 ②の調査について:読み能力と音韻意識の関連について小学校1年から、縦断調査を行い、本年は5年目となる。年度末に調査を実施し、来年度、結果分析を進める予定である。本年度分析した小4時の調査結果では、①と同じ特殊音節を含む非語の分解課題において、全体としてはモーラ反応数が、①の調査結果より増加していたが、①の調査結果と同様の特殊モーラ間の差が見出された。 ①と②の研究から見出された特殊モーラに関する音韻意識の知見は、読み書きの指導に有益な示唆を与えるだけでなく、読み書き障害のスクリーニングや評価法作成にあたり、課題語の選定にも大いに役立つものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では初年度に就学前児を対象とした調査を開始し縦断的に調査をすすめる予定であった。調査先予定の保育園の大規模修繕工事等の事情により、調査を延期せざるをえなくなった。そこで、横断的に就学前年長児から小学校2年生までを対象とした調査を行い、また、一方で、小学校1年から開始した縦断調査を継続して行い、就学前から就学後の発達を横断的に、また縦断的観点からとらえる試みを行ってきた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は就学前からの縦断調査を開始し、その結果をこれまで得られた横断調査と縦断調査からの結果と統合して、研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定より、旅費での消費が少なくなっていることにより、次年度使用金額が生じているが、金額としては大きいものではない。当該年度の交付金額をほぼ予定通り使用して、研究を進められていると考えている。
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次年度使用額の使用計画 |
研究資料として必要な文献資料等の購入にあてる予定である。
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