研究実績の概要 |
本研究の目的は、社会資源の少ない中都市で実現可能な、多職種連携協働による幼児期の発達支援体制を構築することである。 平成25年度には要支援児の実態調査を実施した。SDQ(Strength and Difficulties Questionnaire)の25項目に先行研究を参考に5項目を追加した調査票を作成し、市内の保育所・幼稚園の保育者に4歳児、5歳児計2,024名の評定を依頼した。2,024名のうち、SDQで抽出された要支援児の割合は8.2%であった。平成26年度に30項目の調査結果を分析した結果、SDQの5領域(多動、情緒、行為、仲間関係、向社会性)に加えて、SDQ単独では得られない「言葉・動作」の因子が抽出され、発達障害リスク児を早期に発見するためのアセスメントツールとしての有用性が示唆された。 妥当性と信頼性を検証した上で、平成27年度には基準値を作成して、レーダーチャートで表示できる延岡式得手不得手チェックシート(NSDCS)として整備した。2,024名のうち、NSDCSで抽出された要支援児の割合は10.3%であった。また、平成26年度、平成27年度に、発達支援のニーズがあり保護者の了解が得られた7園8事例を対象に、医療、保健、福祉、教育、行政の多職種連携協働で、各年度3回の訪問支援を行った。行動観察終了後、毎回、保育者を交えてケース会議を実施し、3回の訪問終了後にはモニタリングを行った。訪問支援を通して、発見のためのアセスメントツールに加えて、保育者が簡便に使用できるアセスメントと連動した支援ツールが必要であることが明らかとなり、平成27年度に、延岡式アセスメント・支援統合ツール試案を作成した。 3年間の結果をふまえて、延岡式アセスメント・支援統合ツールを用いた保育巡回相談のシステムを構築し、延岡式早期発見・早期支援システムとして行政に提言を行った。
|