本研究では、特別な支援を要する子どもの就学に関して、就学支援シート等の内容や活用方法、就学に向けてのケース会議や体験入学等の実施状況、子どもの状態に関して幼稚園と保護者とが共通理解を深める方法等について、調査研究や事例研究を通じて明らかにし、教育現場で活用できる資料を提供することを目的とした。 この目的のため以下の4研究、即ち、研究①:特別な支援を要する子どもについて、幼稚園と保護者とが共通理解を深める方法に関する調査研究、研究②:就学に際し幼稚園が小学校に提出する文書や引き継ぎ方法等に関する調査研究、研究③:特別な支援を要する子どもの支援を継続するための取組に関する調査研究、研究④:一貫した支援を実現するための取組を利用した子どもに関する事例研究を実施した。 当初は3年計画で開始し、研究①から③については平成27年度までにほぼ終了したが、研究のとりまとめに当たり、学会発表し意見を聴取する必要があったことや、研究④において、事例対象の子どもの就学後の実態や支援内容・方法まで情報収集する必要があったことから、研究期間を1年間(平成28年度)延長申請し、これからのことに取り組んだ。 幼稚園の4歳児学級の頃から小学校3年生まで追跡した事例について、エピソード記述を基に考察を行った。その概要は以下の通りである。幼児期の保護者は子どもの姿を理解することが難しく、時間もかかった。しかし、幼稚園が繰り返し保護者と面談をし、幼稚園が行った支援について理解を促したところ少しずつ保護者は子どもの姿や支援の必要性を理解しはじめ、就学支援シートの作成も承諾した。この過程を経て通常の学級に入学したが、3年生になって、幼稚園が実施したものと同様の手厚い支援を求めて、通級による指導を受けることを選択した。幼児期の粘り強い説明と合意形成が学齢期の適切な支援に結びつくものと考えられた。
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