視覚と聴覚に障害がある「盲ろう」は、重度の情報障害とコミュニケーション障害をもたらす。我が国における「盲ろう」の発生頻度は著しく低い。また、我が国では「盲ろう」が独自の障害と認められていないため、生後早期に我が子に「盲ろう」という障害があると分かった際、家族が養育に関する情報を入手することは極めて困難である。顔を見せても声をかけても、見えない・きこえないために反応が乏しい我が子を前に、どうすれば愛着関係を築けるのか、どう養育すべきかなどの情報がないが故に、より大きな不安の中に家族は置かれることになる。 本研究では、海外の文献研究、事例研究、アメリカの学校の現地調査を通して、我が国における先天性盲ろう乳幼児とその家族に対する超早期からの教育的支援プログラムを開発することを目的としている。 本年度は、国内における資料収集と海外の関連文献のレビューを行った。 国内においては、盲ろう乳幼児と家族が定期的に母子通園している特別支援学校や、盲ろう乳幼児が入所している施設、盲ろう乳幼児を養育している家庭を訪問し、教育活動や生活の様子を観察、担当教員や施設職員、家族への聞き取りを行い、情報を整理した。 また、アメリカ、カナダ、イギリス、北欧の文献を収集し、「早期介入」「早期支援」に視点をあててレビューを行った。海外の関連文献のレビューと並行しながら、国内の教育活動や家庭・施設における実際の生活を観察すること、盲ろう乳幼児はもちろん関係教職員および保護者のニーズを把握することにより、教育的支援プログラムの内容だけではなく、有益な情報提供のあり方をも検討することができたことは、大変意義深いと考えられる。
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