研究課題/領域番号 |
25390001
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
ジェズニチカ イザベラ 東北大学, 国際教育院, 准教授 (40565769)
|
研究分担者 |
鈴木 孝将 福岡大学, 工学部, 教授 (10580178)
柳生 数馬 福岡大学, 工学部, 助教 (90609471)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 表面化学 / ラマン分光 / 金属有機構造体 / 表面分光 / プラズモニクス / 太陽電池 / 自己組織化 |
研究概要 |
本研究課題における主な目的は、ナノサイズの金属-配位子ハイブリッド配列構造体の作製とその光応答性の評価、およびプラズモン効果による光散乱増強の発現機構を明らかにすることである.平成25年度は、LMNP構造体の試料作製と化学的評価および光散乱の特性評価を行った.下記概要のうち、金属表面への有機分子固定法と、プラズモン増強効果に基づく顕微ラマン測定法に関する成果を論文および学会発表している. 1.LMNP構造体の作製: 金属表面に金属(M)-有機分子(MO)-金属(M)配列(いわゆるLMNP構造体)を作製するため、前駆体である溶液の濃度・温度・pH諸条件の検討を行った.作製した試料は、STMによって評価した. 2.作製した配列の評価: 作製したLMNP構造体は、さらにラマン分光や光学顕微鏡観察、EDX分析で評価した.測定結果では、得られた構造体は、x軸方向にM-MO-M長周期構造を有し、M-MO-M鎖間は7オングストローム程度であった.y軸方向には、M鎖の一次元構造と積層した有機分子が確認できた.構造体は、長方形状でナノメートルオーダーの結晶を形成していた. 3.ラマン分光測定による評価/4.LMNP構造体の熱安定性の評価: ラマン測定では、M-MO-M構造体の形成を意味する、M-M結合とM-MO結合の振動を明確に確認した.構造体を形成させるのに少なくとも4種類の成分を使用したことから、EDX-SEMを用いてさらに化学組成の分析を行った. さらにこの構造体でラマン測定を行ったところ、金属表面に有機分子が吸着した状態と比較して、ラマンシグナルの増強を確認した.これは、構造体が強いプラズモン増強を起こすことを示唆している.また熱安定性に関しては、構造体に電子線を照射し安定であることを確認した. 5.光散乱プロファイルの測定: 本測定を可能にするための、数マイクロメートルオーダーで均一な試料の調製法を検討中である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前項1、2は達成できている.3については、633nmレーザー光によるラマン散乱増強効果が確認できている.照射波長依存性を測定するためには、ラマンシステムのアップグレードが必要で実施できていない.前項4については、集光した電子線による熱安定性は評価できている. しかし、作製した構造体が照射光の焦点サイズより微小で不均一に分散しているため、光照射による熱安定性評価(4)と、暗視野顕微鏡による散乱プロファイル測定(5)は中断している.ただ、これは本研究全体の進捗と最終目標に大きな影響を与えるものではない.
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度では、福岡大学との協力を開始し、構造体のI-V特性を計測する.この手法により、金属のフェルミ順位近傍の電子状態を検討する.さらに、我々が作製した構造体のシリコン表面への移行を試みる.シリコン表面へLMNP構造体を固定するには別種の化学的固定法が必要であるが、これを実現できれば、金属薄膜電極で挟み込みシリコン-LMNP光電池セルの作製に着手する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成26年4月1日をもって東北大学理学研究科へ異動の際、事務処理上の都合で生じた. 消耗品購入で4月分として使用.
|