研究課題/領域番号 |
25390002
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
寺口 昌宏 新潟大学, 自然科学系, 助教 (30334650)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | らせんポリマー / ナノ空孔 / 分離膜 / 光学分割 / 光学活性ポリマー / らせん選択重合 / 誘起片巻きらせん構造 / 光学活性イオン液体 |
研究実績の概要 |
本年度は、光学活性基を階層的に配列した高分子膜を合成するための片巻きらせん構造を持つ高分子の合成を新たに検討した。 まず、立体的な高分子構造が制御された高分子が得られる重合法として、らせん選択重合を利用し、片巻きらせん構造を持つポリフェニルアセチレン誘導体の合成を行った。また、除去可能な光学活性基を有するフェニルアセチレンをロジウム触媒により重合し片巻きらせん構造に制御されたポリフェニルアセチレンの合成を行った。また、光学活性な溶媒中で光学活性溶媒との相互作用を利用して合成した誘起片巻きらせん構造を有するポリジフェニルアセチレン誘導体の膜を用いた光学異性体識別能についても検討した。 イミン結合を介して置換基を有する芳香族置換基を有するアキラルフェニルアセチレンのらせん選択重合により片巻きらせんポリマーを合成することに成功した。イミン結合は反応性が高く高分子膜状態でも容易に加水分解または交換反応により置換基の除去および交換が可能であり、除去によりナノ孔の生成について検討を予定している。 イミダゾリル塩部位を介して光学活性なジメチルピナニルシリル基を有するフェニルアセチレンを合成し、ロジウム触媒により重合した。生成したポリマーのテトラヒドロフラン、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド溶液の円偏光二色性(CD)スペクトルでコットン効果が見られたことから高分子主鎖が片巻きらせん構造をもつことが確認できた。 アキラルなポリ(4-トリメチルシリルジフェニルアセチレン)を光学活性なD-(+)-あるいはL-(-)-リモネン中で加熱し、片巻きらせん構造をポリマーに誘起した。このポリマーの膜を用いて、濃度勾配を駆動力とするラセミ体のアミノ酸水溶液の光学異性体選択透過性について調べたところ、選択透過性が見られることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
種々のアキラルおよびキラルな置換基を有するらせんポリアセチレン類の合成には成功しているものの、それらのポリマー膜を用いた透過実験およびナノ孔の生成についてはまだ一部のポリマーについて行った段階である。丈夫な膜を得るためにはより高重合体であることが望ましいと思われる。今後の重合条件の検討も行うことおよび膜厚を大きくすることによっても改善できると考えられる。 主鎖のみに不斉片巻きらせん構造を有するポリジフェニルアセチレンについて光学異性体選択透過性について検討を行ったが、選択性は見られたもののより改善が望まれる。透過基質の検討あるいは透過方法などの検討を今後行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
ポリジフェニルアセチレン系、ポリフェニルアセチレン系について種々のアキラルおよびキラルな置換基を有するらせん階層構造をもつポリマー合成を行う。合成方法としてはアキラルモノマーからのらせん選択重合、キラルモノマーからの片巻きらせん誘起重合、およびキラル溶媒による片巻きらせん構造の誘起など外部刺激による方法を引き続き検討する。 合成したポリマーを製膜後、膜状態での脱置換反応により膜中へのナノ細孔の生成を行う。ナノ空孔を階層的に持つ高分子多孔膜の機能として不斉分子認識能の検討を予定している。光学異性体分離膜として、濃度勾配を駆動力とした透過およびパーベーパレーション法を検討する。また、キラルナノ孔を活用する不斉分子吸着能または触媒能についても検討したいと考えている。ブランク実験を行うことにより不斉ナノ空孔および不斉ナノ孔の階層的(片巻きらせん状)配列構造の高分子機能への効果について検証したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
ポリマー膜を用いた透過実験およびナノ孔の生成についての実験が一部のポリマーについて着手した段階で、当初予定よりも検討が進んでいないため予算に残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度には既に合成済みのポリマーについて透過実験およびナノ孔の生成反応を検討するとともに、より最適化した構造のモノマーの設計、重合、透過実験、ナノ孔の生成反応を行うため、当該助成金および次年度分として請求した助成金は主にモノマー・ポリマーの合成試薬および反応試薬、反応用ガラス器具などの消耗品費としての使用を予定している。
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