研究課題
基盤研究(C)
GaAs(111)A基板上に作製した高い面内対称性を有するGaAs/AlGaAs量子ドットからのもつれ合い光子対発生の実証を行った。実験には、顕微フォトルミネッセンス装置を用いた。バイエキシトン・エキシトンのカスケード発光の偏光に依存した光子相関測定を行った結果、きわめて高品質なもつれ合い光子対が発生していることが実証された。この結果に関して、Physical Review Bへ論文掲載およびプレスリリースを行った。また、同じ量子ドットを用いた、NMR応用を見据えた核スピンに関する実験をトゥールーズ大学と共同で行い、その成果がNature Communicationsに掲載された。続いて、対称性の高い形状を有する(111)面上の量子ドットを光ファイバー通信に適用可能な波長帯で実現するため、液滴エピタキシー法をInAs/InP材料系に適用する試みを行った。本テーマを開始する前に、InAs/GaAs(111)における液滴エピタキシーに関する実験も行ったが、こちらは格子不整合度が大きいため、目的の特性を持つ量子ドットの実現が困難であることがわかった。InAs/InP系では、格子不整合度は4%程度であり、低温過程を用いる液滴エピタキシー法でも光学活性な量子ドットが実現できることを見出した。量子ドットから光通信波長帯である1.3および1.55ミクロン帯の発光を確認した。量子ドットからは、室温においても高強度な発光が得られ、高品質であることが明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
GaAs/AlGaAs材料系で、きわめて高い面内対称性を有する量子ドットを作製することに成功した。従来法では、量子ドット全体の1%にも満たない数の量子ドットのみがもつれ合い光子を発生していたのに対して、5%近い数の量子ドットがもつれ合い光子対発生に十分な特性を有していることがわかった。これはきわめて重要な成果である。また、高品質なもつれ合い光子対の発生も実証した。その品質は世界最高クラスの品質である。さらに、新しい展開として、通信波長帯で発光する量子ドット作製に関する研究もスタートして、良好な発光特性が得られる指針が得られている。副次的な成果として、量子ドットの高品質性を用いた核スピン偏極に関する実験も進み、高いインパクトファクターを有するNature Communicationに掲載された。以上の理由により、計画以上に進展しているといえる。
GaAs/AlGaAs材料系では、量子ドットの対称性を含む品質をさらに向上させるために、成長条件の最適化を行う。具体的には、良質な膜成長の困難な(111)A面上のAlGaAs成長条件の最適化、表面の原子ステップなどが量子ドットに与える影響を最小化するための人工濡れ層の導入などを試みる。また、電流注入によるもつれ合い光子対発生を実現するための制御の難しい(111)A面上でのドーピング制御の検討を行う。InAs/InP系に関しては、ひずみによる構造不安定性、ピエゾ効果による電子-正孔の分離の問題などを回避する手法を検討する。これらを元に量子ドット成長条件の最適化を行う。また、作製した量子ドットの顕微フォトルミネッセンスにより、微細構造分裂幅の評価を行う。
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Nature Commuinications
巻: 5 ページ: 3268-1_7
10.1038/ncomms4268
Physical Review B
巻: 88 ページ: 041306-1_5
10.1103/PhysRevB.88.041306
http://www.nims.go.jp/news/press/2013/07/p201307290.html