本研究の目的は、液中レーザーアブレーションによるアップコンバージョンナノ粒子形成の機構解明、および、生成アップコンバージョンナノ粒子の医工学的応用である。 粒子生成機構解明のために、発光分光測定を試みたが、液中ではアブレーションにより生成するプラズマが高密度となるために測定が困難なことが分かったので、生成ナノ粒子の特性を中心に形成機構の解明を行った。粒径が数百nmと数十nmの2種類のナノ粒子が生成することが明らかになり、数百nmのナノ粒子に関してはターゲットであるセラミックス焼結体がレーザー照射で断片化することにより生成し、数十nmのナノ粒子に関してはレーザー照射による加熱過程と周囲の液体による冷却過程を経て生成することを提案した。併せて、電子顕微鏡観察での結晶格子縞等から15 nm程度のナノ粒子においても高い結晶性を有し、高温過程を経てもドーパントの脱離等がないことを示し、単一ナノ粒子レベルでの顕微鏡観察と発光分光測定、photon avalanche効果の観察等多くの知見を得た。 医工学応用のために、生体透過性が高い近赤外光のアップコンバージョンナノ粒子と光感受性物質への照射により活性酸素が発生することを示し、更に培養がん細胞A549を用いてがん治療の効果があることを確認した。これらにより、アップコンバージョンナノ粒子と低侵襲性がん治療法の光線力学的療法を組み合わせると、光線力学的療法では治療しにくいとされてきた大きながんや深部のがんを治療できる可能性を示した。併せて、アップコンバージョンナノ粒子の生体親和性を向上させるためにポリエチレングリコールで表面修飾を行い、凝集安定性等の向上を確認した。 更に他の材料系でもナノ粒子生成機構解明を行うことにより上記生成機構解明の確認を行った。
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