単一のナノ粒子において発現する特性は、ナノ粒子個々の構造と密接に関連する。従来のナノギャップ電極を用いたナノ粒子の特性評価では、特性を構造と同時にその場で評価することが困難であった。本研究では、カーボンナノチューブ(CNT)をナノプローブやナノヒータ、あるいは電極として用いた高分解能透過電子顕微鏡内マニピュレーションその場観察測定法を確立し、その手法を用いて単一シリコン(Si)ナノ粒子の構造を原子レベルで観察しながら電流や電圧、光を同時にその場で測定し、Siナノ粒子において発現する特性や現象を明らかにすることを目的とした。まず、CNTナノプローブヒータ電極を作製し、CNTの表面に単結晶Siナノ粒子を超高真空電子線蒸着法により作製する手法を確立した。その後、透過電子顕微鏡内でCNTへの通電によりSiナノ粒子をジュール加熱し、そのときの単一Siナノ粒子の構造変化を明らかにした。Siナノ粒子は、加熱すると接触しているCNT外層と反応してシリコンカーバイド(SiC)ナノ粒子を形成した。さらに加熱を続けると、SiCからSiが昇華してカーボンナノカプセルへ変化することがわかった。このとき、CNTナノプローブヒータからの熱放射スペクトルを測定し、SiCナノ粒子の構造が変化するときの温度を明らかにした。最終年度、自然酸化膜で被覆された、直径10 - 20 nm程度の単一Siナノ粒子を透過電子顕微鏡内で2本のCNTナノプローブ電極の間に架橋させ、Siナノ粒子の構造を観察しながら電気伝導特性を調べた。電流-電圧特性の解析から、自然酸化膜で被覆された単結晶Siナノ粒子の電気伝導は、トンネル伝導が支配的であることが示唆された。今後、測定系を改良し、直径10 nm以下のSiナノ粒子についても計測を行い、単一Siナノ粒子の電気伝導機構を解明する。
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