• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実施状況報告書

単結晶ナノ粒子生成容器としてのタンパク質構造の最適化

研究課題

研究課題/領域番号 25390020
研究種目

基盤研究(C)

研究機関明治大学

研究代表者

吉村 英恭  明治大学, 理工学部, 教授 (70281441)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードフェリチン / ナノ粒子 / 単結晶 / フェライト
研究概要

この研究課題では中空構造のタンパク質フェリチンの空洞中に無機物の結晶を成長させて大きさがそろったナノ粒子を作り、かつナノ粒子の結晶構造を制御することを目的としている。研究計画では初年度はフェライトのナノ粒子の結晶構造を制御することから始めることになっており、24量体で構成されているサブユニットの一部に鉄酸化活性部位を持つサブユニットに置き換えることを試みた。
1.鉄酸化活性部位のないLサブユニットにHサブユニットにみられる酸化活性部位を導入した。LフェリチンのY24およびK59をグルタミン酸に、G62をヒスチジンに変えて鉄酸化活性部位を導入を試みた。Y24E, K59E, G62H, Y24E+K59E, K59E+G62H, Y24E+K59E+G62HをサブユニットとするLフェリチンを作った。このうちK59Eを含むものはすべて不溶画分に入ってしまった。Y24EおよびG62Hは生成できたが、鉄の酸化速度は野生株とほとんど同じであった。
2.ウマのHフェリチンのアミノ酸配列は知られていたが、遺伝子は手持ちがなかったので、合成により作成した。プラスミドに組み込み大腸菌で発現させることはできたが、イオン交換クロマトグラム流出のフェリチン画分が通常単一ピークになるところが2つのピークとなった。鉄の酸化速度を計測したところ、どちらの画分もLフェリチンと比べて2桁以上早く鉄を酸化することがわかった。しかし、反応後タンパク質の沈殿がLフェリチンに比べて多く見られた。
3.HとLのキメラフェリチンを作製することを目的にHフェリチンとLフェリチンの遺伝子をマルチクローニングサイトのあるプラスミドベクターに組み込んで発現させた。電子顕微鏡での観察では24量体を形成していることが確認された。鉄酸化速度は野生株とかわらなかった。電気泳動で調べたところLフェリチンが発現していないことがわかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

1.Lフェリチンへの酸化活性部位の導入はY24EとG62H変異株のみが可溶部分として得られ、24量体のフェリチン分子が得られたことも確認できたが、他の変異体は不溶画分になってしまった。カエルのフェリチンを用いた類似の実験ではうまく行っている報告がでているので問題ないと考えていたが、予想外のことで予定が遅れた。鉄酸化活性を得るには少なくとも3残基の導入が必要と考えているので、次年度以降もこの課題が残ることになった。
2.Hフェリチンの遺伝子が得られ、鉄酸化活性も高いことが確認されたので予定を達成できたと考えている。
3.マルチクローニングサイトによりHフェリチンだけ発現したとしても鉄酸化速度が変化していないのはおかしいので現在調査中である。HとLのキメラフェリチンを作ることはまだ達成できていないと考えている。マルチクローニングサイトが十分に働いていないことも考えられるので、引き続き発現状態の確認をしなければならない。また、酸性溶液中での再構成も試すことになるので、予定より若干遅れる。
4.静電ポテンシャルの計算は、ある程度鉄酸化活性のあるフェリチンが得られていないのでまだ行っていない。前期項目がある程度達成できてからかかる予定である。

今後の研究の推進方策

1.K59Eにすると構造ができないということは59の近傍にあるLサブユニットの残基と59Eが立体構造的に干渉していることが考えられる。立体構造からみると141番目のリジンが妨害していることが予想されるので、この部分をHサブユニットと同じアラニンに変更して、酸化活性部位の導入を試みる。酸化活性部位を構築するには少なくとも3残基が必要だと考えているので、他の残基の置換をためして、必ず酸化活性部位の導入を実現したい。
2.なぜHフェリチンで2つのピークがでるか解明する。SDS電気泳動、電子顕微鏡では2つの違いは見られない。イオン交換で差がでるということは表面の電荷に違いがあると予想されるので、遺伝子およびプラスミドに不具合がある可能性もあり、確認をおこなう必要がある。HフェリチンはLフェリチンに比べて沈殿しやすいという感触を得ているが、アメリカのグループではHフェリチンを使用しているので、遺伝子やクローンしたタンパク質の確認を行う予定である。また、反応条件についても検討する。
3.マルチクローニングサイトがうまく機能していない。遺伝子の入れ方を検討してみるとともにシングルクローニングサイトをもつプラスミドを2種類いれることも検討してみる。

次年度の研究費の使用計画

残額は7万円程度で年度の終わりを迎え、学生の交代の時期になったので無駄な購入は控え次年度に繰り越すことにした。
当初の計画にない新しいタンパク質の変異体を作成することになったので、そのための資金として使用する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Ferritin protein encapsulated photoluminescent rare earth nanoparticle2013

    • 著者名/発表者名
      Tomoaki Harada, Hideyuki Yoshimura
    • 雑誌名

      J. Appl. Phys.

      巻: 114 ページ: 044309(1-8)

    • DOI

      10.1063/1.4816567

    • 査読あり
  • [学会発表] Photoluminescence Property of Eu and Tb Doped Y Based Nano-phosphor synthesized in an Apoferritin Cavity2013

    • 著者名/発表者名
      Tomoaki Harada, Hideyuki Yoshimura
    • 学会等名
      第51回日本生物物理学会
    • 発表場所
      京都国際会館
    • 年月日
      20131028-20131030
  • [学会発表] Insertion of ferroxidase center in horse L ferritin subunit2013

    • 著者名/発表者名
      Mai Nemoto, Tomoaki Harada, Hideyuki Yoshimura
    • 学会等名
      第51回日本生物物理学会
    • 発表場所
      京都国際会館
    • 年月日
      20131028-20131030
  • [学会発表] フェリチンを用いて作製した磁性体ナノ粒子の二次元配列化2013

    • 著者名/発表者名
      荻村史佳、引地祐介、吉村英恭
    • 学会等名
      第74回応用物理学会
    • 発表場所
      京都(同志社大)
    • 年月日
      20130916-20130920
  • [学会発表] アポフェリチンを利用したランタニド添加型YVO4ナノ粒子の作製2013

    • 著者名/発表者名
      原田知明、吉村英恭
    • 学会等名
      第74回応用物理学会
    • 発表場所
      京都(同志社大)
    • 年月日
      20130916-20130920
  • [学会発表] Synthesis of Protein Encapsulated Nanoparticles2013

    • 著者名/発表者名
      Hideyuki Yoshimura
    • 学会等名
      Annual World Congress of Nanomedicine
    • 発表場所
      Suzhou, China
    • 年月日
      20130603-20130605
    • 招待講演

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi