研究概要 |
この研究課題では中空構造のタンパク質フェリチンの空洞中に無機物の結晶を成長させて大きさがそろったナノ粒子を作り、かつナノ粒子の結晶構造を制御することを目的としている。研究計画では初年度はフェライトのナノ粒子の結晶構造を制御することから始めることになっており、24量体で構成されているサブユニットの一部に鉄酸化活性部位を持つサブユニットに置き換えることを試みた。 1.鉄酸化活性部位のないLサブユニットにHサブユニットにみられる酸化活性部位を導入した。LフェリチンのY24およびK59をグルタミン酸に、G62をヒスチジンに変えて鉄酸化活性部位を導入を試みた。Y24E, K59E, G62H, Y24E+K59E, K59E+G62H, Y24E+K59E+G62HをサブユニットとするLフェリチンを作った。このうちK59Eを含むものはすべて不溶画分に入ってしまった。Y24EおよびG62Hは生成できたが、鉄の酸化速度は野生株とほとんど同じであった。 2.ウマのHフェリチンのアミノ酸配列は知られていたが、遺伝子は手持ちがなかったので、合成により作成した。プラスミドに組み込み大腸菌で発現させることはできたが、イオン交換クロマトグラム流出のフェリチン画分が通常単一ピークになるところが2つのピークとなった。鉄の酸化速度を計測したところ、どちらの画分もLフェリチンと比べて2桁以上早く鉄を酸化することがわかった。しかし、反応後タンパク質の沈殿がLフェリチンに比べて多く見られた。 3.HとLのキメラフェリチンを作製することを目的にHフェリチンとLフェリチンの遺伝子をマルチクローニングサイトのあるプラスミドベクターに組み込んで発現させた。電子顕微鏡での観察では24量体を形成していることが確認された。鉄酸化速度は野生株とかわらなかった。電気泳動で調べたところLフェリチンが発現していないことがわかった。
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