ゾル・ゲル法により作製した酸化鉄ナノチューブを用いて光電変換用のセルを作製した.負極のITO基板上に,鉄アセチルアセトナートのエタノール溶液をスピンコートすることにより酸化鉄薄膜緻密層を形成し,アセチルアセトンでペースト状にした酸化鉄ナノチューブをその上にスピンコートして多孔質層とした.その後,多孔質層のナノチューブを固定するため加熱処理を施す.ナノチューブは加熱処理で,結晶構造や形態が変化するため,熱処理温度の最適化を行う必要があり,270℃の空気中熱処理において目的の多孔質層が形成できることを見出した.この多孔質層上に有機ペロブスカイト(CH3NH3PbI3)をスピンコートし,次に正孔移送層となるP3HTをスピンコートした後,金電極を真空蒸着して光電変換用のセルとした.この過程で問題となったのは有機ペロブスカイトをスピンコートするための条件であり,回転数を上げすぎると,有機ペロブスカイトが多孔質層に十分拡散せず,光電変換特性が悪くなる.また,回転数を抑えすぎると,緻密層近くまで拡散し,電荷分離が有効に行われなくなり,変換効率が悪くなることも見出した.最適なスピンコート条件では,短波長領域(400nm付近)での光分光感度特性(IPCE)は40%に達し,600nm 程度の赤色領域でも10%程度IPCEを実現することができた.さらに金電極をグラフェンに置き換える実験を行い,ガラス基板上にグラフェンおよび伝導性を高めた窒素ドープグラフェンの転写を行った. 亜鉛ドープした酸化鉄ナノチューブについても同様にセルを作製し,IPCEを測定したが,酸化鉄ナノチューブに比べ半分程度の特性しか得られなかった.これは,純度の高い亜鉛ドープ酸化鉄ナノチューブが得られていないこと,亜鉛をドープすることにより導電性が低下することなどの原因が考えられ,試料の高純度化を通じて解決していく必要がある.
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