研究実績の概要 |
電子顕微鏡法(TEM)による金属有機構造体(MOF)の構造解析を行うためには、電子線ダメージに対する対処法の確立が必要です。平成25年度では、いくつかのMOF試料を用い、電子線ダメージを低減し、かつ必要な空間分解能を得るための最適なTEM観察条件を明らかにしました。平成26年度では、平成25年度で得られた最適条件を基にして、更に多様なMOFの構造解析、特に新規に合成されたMOF材料の構造を決定することを研究目的としました。これを実施するため、海外在住の研究協力者たちとの連携を進め、MOF材料合成の知見や電子顕微鏡観察技術のノウハウなどの情報交換を行うとともに、研究協力者から提供された計6種類の新規MOF材料の電子顕微鏡観察を行い、その構造を解析しました。その中で特に重要な結果の一つは、ナノ銀粒子(AgNCs)の表面に成長させたMOF材料(4, 4′, 4″, 4''' -(porphyrin-5,10,15,20-tetrayl)- tetrabenzoic acid (H4 TCPP)の構造決定です。無機ナノ材料の表面官能基化は無機材料のさらなる化学特性を与える手段ですが、その実現のためには官能基の空間制御や無機ナノ材料との界面結合状態を理解することが必要です。今回のケースでは、高分解能電子顕微鏡観察によりナノ銀粒子の表面に成長されたMOF材料の厚みが10nm~50nm範囲内にコントロールされていることを、また、成長したMOF材料の結晶方位はナノ銀粒子の結晶方位と相関があることを明らかにしました。この研究成果はすでに論文としてまとめられ、2015年にJACSに掲載されました。
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