研究課題/領域番号 |
25390024
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
張 民芳 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノチューブ応用研究センター, 研究員 (60518330)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ナノホーン / ナノカーボン / ナノチューブ / 生体内分解 / DDS |
研究実績の概要 |
近年、カーボンナノチューブ(CNT)やナノホーン(CNH)などのナノカーボンを使用した医療応用研究が盛んになっている。しかし、ナノカーボンは毒性が低いものの、肝臓や脾臓などの組織に集積され易いことが分かっている。長期にわたって人体の健康を守ることが大前提になるため、実用化するには、ナノカーボンは組織内で分解、あるいは、体外へ排出が確認できなければならない。本年度は本研究テーマが計画通り進展し、培養細胞を用いて、CNHの免疫細胞内の分解状態を調べ、分解可能な量を明らかにしました。具体的に以下の研究成果を得られた。 1)CNHの細胞への取り込み量の測定方法の確定 細胞内で分解されたCNHの量を推定するためには、CNHの細胞内の取り込み量の測定方法を確定しなければならない。以前申請者らが開発した近赤外光吸収測定法を再度検討し、最適なプロセスを探索した。特に、コントロール細胞溶解液のバックグラウンドを最低値にするため、最適な溶解剤を選択し、溶解反応時間を確定した。 2)CNHの免疫細胞内分解可能性の解明 本研究では、マウスのマクロファージRAW264.7 細胞とヒト由来のTHP-1白血病細胞を用いて、CNHの細胞内での分解可能性を調べた。2種類の免疫細胞の培養液にCNHを添加し、細胞内CNH量の経時的な変化から、細胞内で分解されたCNHの量を確認した。その結果から、Raw 264.7とTHP-1細胞両方とも、10日で取り込まれたCNH量の約30%が分解されたことが分かった。また、CNHの細胞内分解メカニズムも調査した。マイクロファージ細胞はCNHの貪食により、活性酸素(ROS)を生成し、生成したROSはCNHの酸化分解を促進した。CNHを酸化分解することで、ROS量の上昇が抑制され、IL-6とTNF-αなどのサイトカインの放出もないことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は本研究テーマが計画通り進展している。二種類の細胞を用いたCNHの分解可能性を明らかにし、細胞内分解メカニズムも調べた。得られた結果を国際雑誌nanoscaleに掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は予定通り、動物マウスの肝臓から、免疫細胞(クッパー細胞)を採取し、初代マクロファージ細胞内のCNH分解状態を調べ、細胞内の分解可能性を解明すると共に、細胞内分解性が高いCNHの構築を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
調達方法の工夫などにより、当初計画より経費の節約ができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の経費と合わせ、薬品の購入に使う予定。
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