研究課題
ナノカーボン材料(CNM)の生体組織内での生分解性の解明は、CNMの安心・安全な産業応用化には急務の課題である。CNMは毒性が低いものの、肝臓や脾臓などの組織に集積され易いことが知られている。長期にわたって人体の健康を守ることが大前提になるため、実用化するには、CNMは必ず組織内で分解されることと、体外への排出が絶対条件である。前年度では、カーボンナノホーン(CNH)の免疫細胞内の分解可能性を明らかにした。本年度では計画通り進展し、動物マウスを用いて、体内肝臓組織内のCNHの生分解可能性を調べた。特に、CNHの肝臓内の生分解を解明するため、肝臓内のCNHの定量方法を見出した。一般的に、体内組織のCNMの蓄積量を測定するには、CNMを放射線物質や、金属粒子などによりラベル化し、体内組織のラベル物質の量からCNMの量を推定する方法が使われている。しかし、ラベル化するには化学反応や内包プロセスなどが必要であるため、CNHの表明性質が変化され、CNHの体内分布もラベル化する前と比べ、大きく異なってしまう。本研究では、ラベル化を利用せずCNH本来の近赤外光吸収特性を利用して、CNHの肝臓内蓄積量を測定するという方法を提案した。良い再現性と高い正確性を得るため、CNHを担持した肝臓を完全に洗浄(灌流)し、均一に溶解する必要がある。そのため、本年度では、様々な分解酵素や分散剤を用いて、肝臓灌流と肝臓で溶解する最適な条件を見出した。この方法を用いて、肝臓内CNHの量は、最低1ug/LiverのCNHを測定することが実現できた。また、肝臓内CNHの経時変化を調べ、1週間でCNHが肝臓内で約20%分解されたことが分かった。現在、本研究開発したCNHの肝臓内定量法をカーボンナノチューブ(CNT)の研究に応用し、ナノカーボン材料の特性と生分解性の関連性を解明している。
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