研究実績の概要 |
無機太陽電池と比較し、有機薄膜太陽電池における一番の短所として光電変換効率の低さが挙げられる。これら変換効率向上の手段として、光電変換層の薄膜内部における構造制御がある。一般的な構造制御手法として、熱による相分離を利用したバルクヘテロ接合があるが、完全に内部構造を制御する事は困難である。 そこで本申請研究では、サイズが既知である有機半導体ナノ結晶をナノドメインとして捉え、集積・薄膜化による薄膜内部の構造制御を試みた。 具体的には有機半導体ナノ結晶としてフラーレンC60ナノ結晶を再沈法により作製し、サイズ約40 nmのナノ結晶を得た。次にこれらナノ結晶を自己組織化手法の一つである液-液界面集積法による集積・薄膜化にて素子作製を試みた。液-液界面集積法では、液-液界面にて先ずナノ結晶を集積させ、これをITO基板上へ転写させる。この転写プロセスに於いて、浸漬回数の増加に伴う単粒子薄膜の高密度化に成功し、表面のラフネス値を大幅に改善させる事に成功した。また、浸漬間にベーク処理を導入した場合、単粒子薄膜の膜密度とラフネス値が更に改善する効果を見出した。このことから、ITO基板上でのフラーレンナノ結晶単粒子薄膜の成膜法確立に成功した。続いて電子抽出層として、ゾル-ゲル法によりアナターゼ型TiOX薄膜を成膜し、作製したC60単粒子薄膜をn層、Poly(3-hexylthiophene-2,5-diyl)をp層として用い、正孔抽出層・金属電極としてMoO3とAuを蒸着させる事でp/n構造を持つ逆型有機薄膜太陽電池を作製した。得られた太陽電池のPCEは約3%であり、ナノ結晶がナノ構造制御に有効であることを見出した。
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