研究課題/領域番号 |
25390029
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
尾中 晋 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (40194576)
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研究分担者 |
宮嶋 陽司 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (80506254)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナノ粒子 / 析出物 / 平衡形状 / エネルギー論 / 超球 |
研究実績の概要 |
材料組織におけるかたちには材料物性を反映した特徴がある.合金中の結晶性ナノ析出物粒子の平衡形状は,低指数の結晶面で取り囲まれ,丸い角を持つ多面体と球のあいだのかたちになることがある.研究代表者らはこれまで,このような形状を表現できる超球と呼ばれる空間図形に注目して考察を行い,ニッケルや銅を主成分とする合金中に観察されるナノサイズの析出物粒子の形状と熱処理に伴うその変化が超球近似で系統的に表現できることを示してきた.本研究では,この独創的な超球近似をさらに改良し,超球形状とその変化を示す変数に物理的な意味を与える拡張を行う.これは,材料の組織制御に必要な基礎的な知見を得るための研究である. 平成26年度においては,アルミニウムに5at%の銀を添加した合金を作製し,熱処理によって半径が10nm程度の銀を主成分とするGPゾーンの形状観察を行った.しかしながら,種々の熱処理条件のもとでも観察されたGPゾーン形状はファセットを持たない球に近い形状に限られていた.ニッケルや銅を主成分とする合金中に観察されるナノサイズの析出物粒子の形状が球と多面体のあいだの形状になる理由は,ナノサイズの析出物粒子の形状が母相とのあいだの整合ひずみによる弾性ひずみエネルギーに支配されて決まること,そしてこれらの金属における弾性係数に異方性(<100>が弾性的に柔らかい方向)が顕著であることで理解できる.しかしアルミニウムでは弾性係数の異方性はニッケルや銅に比較してはるかに小さい.この母相金属における弾性係数の異方性の違いが,これらに含まれるナノサイズ析出物粒子の形状の違いをもたらしたと考えることができた.平成27年度以降は,この平成26年度に得られた知見をもとにして,さらに実験的研究を進めていく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
界面エネルギーの異方性が形状を支配する場合には,アルミニウムに5at%の銀を添加した合金中においてもナノサイズ析出物粒子の形状は,球と多面体のあいだの形状となる可能性があった.平成26年度に行った実験の結果はこの予想とは異なるものではあったが,これはナノサイズ析出物粒子の形状が,ナノサイズの析出物粒子の形状が母相とのあいだの整合ひずみによる弾性ひずみエネルギーに支配されていることを示す重要な実験結果であると言える.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの方針を推し進め,今後とも,順調に実験を進めていきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
日程上の制約により計画していた学会に参加できず,計上していた旅費を使う機会がなくなった.また,電子顕微鏡関係の消耗品使用量が予定より少なく,このための支出金額が低くなった.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用金額の一部は,最終年度における研究成果の発表をより活発に行うための旅費として使用する.また,残りの次年度使用金額については,実験の総量を増加させるための消耗品の購入費用と研究補助に対しての謝金にあてる.
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