研究課題/領域番号 |
25390031
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
瀧川 順庸 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70382231)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | バルクナノ結晶材料 / Fe-Ni合金 / 電解析出法 / 高強度 / 高延性 |
研究概要 |
Fe-Ni合金について、均質でかつ内部応力を低減した厚み2mm 以上のバルクナノ結晶材料の創製を試みた。浴組成、合金元素の含有量、錯体化剤、還元剤、界面活性剤、一次光沢剤、pHなどについて検討し、バルク体作製のための電析浴を最適化した。この浴を用い、含有Ni量10-47Niを示す電析Fe-Ni合金を作製した。得られた合金はNi量により異なる結晶構造を示し、FCC構造の40-47Niが15nm程度の微細結晶粒を有しかつ曲げが可能であったため、この条件でバルク体を作製した。引張試験の結果、得られた電析バルクナノ結晶Fe-Ni合金は最大引張強度1.56-1.87 GPaを示した。また、けがき線の変化量から算出した破断伸びは5.5%-15.8%を示し、10%以上の大きな延性を示すバルクナノ結晶Fe-Ni合金の作製に成功した。電析バルクナノ結晶Fe-Ni合金はFe合金の中で最大の強度を誇るマルエージング鋼と同等の強度を有し、かつ延性はそれ以上の値を示した。従来材料を超える強度と延性のバランスを示す、工業的に価値のある材料を作製することができた。 次に、Fe-C-Ni合金について検討した。C源として様々なカルボン酸について検討し、プロピオン酸添加が最適であることが分かった。次に、プロピオン酸を添加した電析浴の浴組成を検討し、最適化した。得られた浴から作製したFe-C-Ni合金は、結晶粒径か14nm程度と微細で、Fe-Ni合金と比較して硬さが向上した。今後、この材料においてもバルク体を作製し、引張試験を行っていく予定である。 また、Fe-Mn合金の作製に向けた、Mn添加方法の検討にも着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Fe-Ni合金においてバルクナノ結晶材料を作製し、その強度と延性の関係を明らかにするとともに、Fe-C-Ni合金の作製プロセスも構築しており、また、Fe-MnあるいはFe-C-Mn合金の作製プロセスも検討しており、おおむね平成25年度の計画実施計画通りに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度と同様に、Fe-C-Ni 系合金の強度・延性バランスの基礎データ取得、Fe-Mn あるいはFe-C-Mn 系合金のバルクナノ結晶材料の作製条件の検討を続けるとともに、Fe-Mn あるいはFe-C-Mn 系合金についても強度と延性の関係について調べ、強度・延性バランスの基礎データを得る。さらに、N を含む合金の作製プロセス検討にも着手する。Fe あるいはFe-C に対して窒素バブリング浴での電析、窒素を含む添加剤による電析を検討し、N 添加量制御を計り、薄膜による微細組織、構成相の評価を経て、バルク体の作製、評価をっていく予定である。なお、研究の過程で一部の合金について健全なバルクナノ結晶材料が得られない、あるいは十分な特性が得られない場合が考えられる。その場合、健全なバルク体が得られる合金系において、その組成を幅広く変化させることにより、強度・延性バランスのデータを取得することで対応する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を遂行する中で、予算の残金が少額となったため、次年度の物品費の一部として繰り越した。 平成26年度の物品費に加算して使用する予定である。
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