研究実績の概要 |
平成27年度は電解析出(電析)法によるFe-Mn合金の作製を行うとともに、電析法により作製したfcc構造を有する合金の延性を支配する因子について検討した。 Fe-Mn合金については、浴組成の最適化によりMnが6at.%まで含む合金の作製プロセスを確立した。また、電析条件(電流密度, pH)を最適化することにより、電流効率70%以上を達成する条件を見いだした。さらに、試料欠陥量が結晶成長モードに起因する(200)配向度と相関があることを見いだした。これらから、高電流効率でかつ数μm以上の断面欠陥および表面き裂のない試料作製に成功した。 電析法により作製したfcc構造を有する合金の延性を支配する因子については、結晶成長モードに起因する(200)配向度と、粒界を脆化するSイオン濃度が主な因子であることが分かった。これら二つの因子を含む延性予測式を構築した。Fe-Ni合金における電析プロセスの最適化により、(200)配向が高くSイオン濃度の低い試料を作製した。その結果、延性予測式の予想通り、23%の延性を示した。また、Ni-W合金においても同様の考えで延性予測式が構築可能であることを見いだした。 研究期間全体を通して、Fe-Ni合金において強度1.6GPa、伸び23%を示す高強度・高延性バルクナノ結晶材料の創製に成功しており、目標を達成している。また、(200)配向度と粒界を脆化するSイオン濃度を因子とした延性予測式を構築しており、鉄基合金のみならずfcc合金を有する合金の延性予測の可能性も見いだした。
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