研究課題/領域番号 |
25390032
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
下条 雅幸 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (00242313)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | プラズモニック導波路 / 表面プラズモン共鳴 / 金ナノ粒子 / 電子線 |
研究実績の概要 |
表面プラズモン共鳴を利用したナノスケールの光回路や光導波路に関する研究が注目されている。これらプラズモニック回路に関する従来の研究では、AuまたはAgのナノ粒子やナノロッドのコロイド溶液を用いたものが多い。しかし、基板上にナノ粒子を含むコロイド溶液を滴下・分散させた場合、一般に粒子はランダムな配置になってしまい、光導波路などの特定の回路を作ることは困難である。本研究では、有機分子修飾と局所的な電子線照射を利用して、ランダムな配置ではなく、意図的に機能的な配列のナノ粒子構造体を作製し、光導波路や光トランジスターなどのプラズモニック回路の開発につなげようとするものである。 計画している手順は以下の通りである。(1)まず基板上にAuコロイド溶液を滴下し乾燥する。(2)その基板上の所望の粒子に対し電子線を照射することにより、その粒子付近に炭素膜を形成し、これによって粒子を基板に固定する。(3)この基板を溶液中で洗浄することで、固定されていない不要な粒子を基板から除去する。 平成25年度に(2)と(3)はおおむね達成できたが、(1)の段階での粒子の配置が不均一になる問題点があった。平成26年度は、粒子や基板を修飾している有機分子を変えることで、この問題の解決を図った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、(1)基板上にAuナノ粒子を分散し、(2)狙った粒子の表面に吸着している有機分子を電子線で壊すことにより、粒子を基板上に固着し、(3)他の粒子を除去することで目的の配列作製を目指している。 まず、 手順(2)における、狙った粒子に電子線を照射することによる固着について検討した。Auナノ粒子のコロイド溶液をシリコン基板上に滴下・乾燥し、その中の狙った粒子に電子線を照射すると、その粒子が基板に固着することが明らかとなった。このとき、特に有機物を外部から供給する必要はなかった。 つぎに、手順(3)における、不要な粒子の除去について検討した。これは、ナノ粒子コロイド溶液を滴下・乾燥した基板について、水への浸漬、界面活性剤の投入、pH調整、超音波照射の効果について検討した。その結果、溶液をアルカリ性にして超音波照射することにより粒子の99.9%以上を除去できることが分かった。 以上のように、狙った粒子を基板上に固着し、不要な粒子を除去する方法が概ね確立した。しかし、手順(1)において、粒子が密に並んでいないことおよび不均一であることが問題点であった。そこで、本年度は、粒子や基板を修飾している有機分子を変えて、基板上への配置を検討した。その結果、3-glycidoxypropyltrimethoxysilaneと2-aminoethanethiolを使う方法では、完全ではないが部分的に粒子が密に配列することがわかった。また、amino-1-undecanethiolを使う方法では、最密ではないが比較的均一に分布することがわかった。また、どちらの場合も電子線照射により基板に固定することができた。よって、これらの方法を使い分けることにより、目的とする構造を作製できると考えられる。 また、ここまでの成果を査読付き論文として投稿し、掲載可(accept)になっている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、本研究手法の手順(1), (2), (3)において、概ねめどがついた。しかし、固定される範囲は電子線照射範囲よりやや大きいことがある。今後は、精密な構造作製ができるように、手順(2)において照射する電子線のエネルギーや電流量と、粒子が固定される範囲の関係を計測して、最適条件を探す。また、少しチャレンジングではあるが、実際にプラズモニック回路を作製してプラズモンの伝播を計測したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請段階で必要と考えていた薬品の一部が、研究を進めていくと、不要であることが明らかとなったため、若干の差が生じた。具体的には、粒子を基板に固定する場合に炭素を堆積させる原料が不要であった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、この額を初期配列を制御するための薬品を増やすことで、使用する計画である。
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