表面プラズモン共鳴を利用したナノスケールの光回路や光導波路に関する研究が注目されている。これらのプラズモニック回路に関する従来の研究では、AuやAgナノ粒子のコロイド溶液を用いたものが多い。しかし、基板上にコロイド溶液を滴下した場合、一般に粒子の配置はランダムになってしまい、導波路など特定の回路を作製することは困難である。本研究では、有機分子と局所的な電子線照射を利用して、意図的な配列のナノ粒子構造体を作製しようとするものである。 その手順は、(1)まず基板上にAuコロイド溶液を滴下し乾燥させる。(2)その基板上の所望の粒子に電子線を照射することで、基板に固定する。(3)この基板を溶液で洗浄することで、固定されていない不要な粒子を除去する。これにより、意図的な粒子配列を作製することができると考えている。 これらの各段階において、それぞれ課題があり少しずつ解決してきた。(1)については、3-glycidoxypropyltrimethoxysilaneを用いるとかなり密に配置できるが、その分布が一様ではなかった。また、2-aminoethanethiolを用いると、最密ではないが均一に分布することが明らかとなった。これらは、最終的な用途により使い分けが可能である。最終年度は特に、(2)における電子線照射条件の検討を行った。その結果、電子線の加速電圧や照射電流によって固定される範囲が大きく変わることが分かった。細い配列を作製するためには、低い加速電圧、小さい照射電流が有利であった。しかし、粒子が固定される幅は、電子線のプローブ径や二次電子が放出される範囲と比較してかなり大きかった。これは、粒子による一次電子の散乱や基板からの後方散乱が考えられ、電子軌道のシミュレーションが必要であると考えられる。
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