研究課題/領域番号 |
25390033
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
小池 一歩 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (40351457)
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研究分担者 |
原田 義之 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (20288757)
矢野 満明 大阪工業大学, 工学部, 教授 (40200563)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 酸化モリブデン / 酸化タングステン / 分子線エピタキシー / エレクトロクロミック / ヘテロ接合 |
研究実績の概要 |
前年度,r面サファイア基板上に700℃でWO3をMBE成長すると,c軸配向した単斜晶WO3薄膜がエピタキシャル成長することを報告したが,表面にサーマルエッチピットが多数発生する問題が残されていた.今回我々は,700℃で15nm成長後に500℃で再成長する二段階成長法を適用したことで,この問題を解消した.一旦,極薄の単結晶薄膜を形成すれば,500℃の低温で再成長しても下地の結晶性が上部層へ引き継がれ平坦な膜が形成される.この方法で成膜した単結晶WO3薄膜を溶液ゲートタイプのエレクトロクロミック素子へ加工し,特性を評価した.溶液ゲート表面を硫酸水溶液で満たし,白金線を介してゲートバイアスを加えたところ,透明であった薄膜が濃い青色に着色し,同時にキャリア密度が約3桁,移動度が約2桁増加した.これは,水溶液中のプロトンが薄膜へ注入されたことで,6配位のタングステンが5配位へ還元され,タングステンブロンズが生成されたためと考えられる.特に,可視光から近赤外にかけて透過率が大きく減衰したことから,キャリア密度の増加に伴うドルーデ吸収が発生したと考えられる.この結果から,抵抗可変型メモリやイオン感応性超薄膜トランジスタへ応用できる可能性が示された.また,二段階成長した単結晶WO3薄膜の上に単結晶MoO3薄膜を成長する,所謂ヘテロ接合を試みた.その結果,単斜晶のWO3(001)薄膜の上に,斜方晶のMoO3(110)薄膜がエピタキシャル成長することが明らかになった.これは,[1-10]MoO3||[010]WO3かつ[001]MoO3||[100]WO3のエピタキシャル方位関係が成り立つためである.我々が知る限り,この系でヘテロエピタキシャル成長に成功したのは初めてであり,今後のデバイス応用に有用な知見を与えたと云える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
r面サファイア基板上に二段階成長法でWO3薄膜をMBE成長することで,平坦でかつ結晶性のよい単斜晶WO3薄膜のエピタキシャル成長に成功した.また,単結晶WO3薄膜を用いたエレクトロクロミック素子の作製やWO3とMoO3のヘテロエピタキシャル成長に着手したことから,おおむね順調に進展していると云える.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,MBE成長した単結晶WO3薄膜やMoO3/WO3ヘテロ接合膜の構造および電気的・光学的特性を調べる.また,それらのエレクトロクロミック特性やガス検出特性を詳しく調べ,新機能デバイスへの応用に向けて検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議の旅費交通費を低く抑えることができたため
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次年度使用額の使用計画 |
今年度未使用分と次年度申請額を全て消耗品費,旅費交通費,人件費に充当し,計画的に使用する.
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