研究概要 |
本(初)年度は代表的主(光)触媒であるTiO2に着目し,反応性雰囲気ガス中のパルスレーザーアブレーション(PLA)法における,網目状構造の自己組織化形成について探索・評価した. 実験方法としては, 雰囲気ガスに酸素を用いて, 67~530Paのガス圧領域にて, TiO2ターゲットのPLAを行った. 堆積させたナノ結晶凝集体構造および物性は, X線回折(XRD), SEM, 透過吸収分光測定により評価した. XRDによる結晶構造の評価により,ガス圧67,100,133Paの試料はアナターゼ, 266Paはルチルの結晶構造を示した. SEMでの表面構造の観察より266Pa以下ではナノ粒子の空間数密度が高く, 266~465Paのガス圧では網目状構造に近い構造が発現している.さらにガス圧を上げると網目構造に近い構造は発現しなくなる. 透過率から光学密度(αd)を求め,光子エネルギー3.5eVでの光学密度(αd)をグラフにすると,ガス圧が高くなるにつれ,光学密度(αd)が小さくなっている.これは,ガス圧が高くなるにつれ,網目構造が発現することにより,ナノ粒子の空間数密度が小さくなっていくからだと考えられる.また,バルクTiO2は,間接遷移型半導体であるので,αdの1/2乗とエネルギーの関係よりバンドギャップ(Eg)を見積もると2.0eV~2.5eVと文献値よりもかなり小さな値になってしまう.そこで直接遷移型を仮定し,αdの2乗とエネルギーの関係からEgを見積もったところ,3.2eV~3.5eVと文献値に近い値となった.これは,バルクTiO2は間接遷移型だと言われているが,ナノ結晶化により,直接遷移型の光吸収が顕著に現れたと考えられる.直接遷移型としてのEgは,アナターゼ型よりもルチル型の方が小さく,この傾向はバルクの文献値と同様であった.
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