研究課題/領域番号 |
25390035
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
橋本 綾子 独立行政法人物質・材料研究機構, 表界面構造・物性ユニット, 主任研究員 (30327689)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 触媒ナノ粒子 / 透過型電子顕微鏡 / その場観察 / カーボン担持体 |
研究概要 |
昨今の地球規模の環境問題やエネルギー問題の解決策として、触媒技術が注目されている。特に、貴金属触媒は工業的重要性が高い触媒であるが、非常に希少で高価であるため、使用量の低減化技術などの研究や開発が盛んに行われている。そこで、本研究では、触媒の使用量低減のために微細化-クラスターや原子化された触媒の構造とその触媒反応特性との関係を理解するために、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた分析・解析を行う。 観察は、収差補正機構付きTEMを使用し、TEMおよび走査型透過電子顕微鏡(STEM)観察を行った。電子線照射によるダメージの軽減と像コントラストの向上のために、加速電圧80 kVとした。 今年度は、グラフェン上に分散させた白金ナノ粒子をTEM内および加熱チャンバー内で加熱させて、白金クラスターや単原子が生成することを確認し、ナノ粒子の微細化条件を探索した。400℃以上で加熱した場合に微細化が確認でき、時間とともに微細化は進んだ。また、白金ナノ粒子の濃度が高いと凝集化が起こりやすく、微細化には低濃度が適していた。真空や水素中などの加熱雰囲気も変えたが、顕著な違いは今のところ見られていない。大気や酸素中での加熱処理はグラフェンを酸化させ、加速電圧80 kVでも電子線照射ダメージが見られた。得られたクラスターや単原子は、グラフェンのエッジ部分に多く存在し、欠陥の多いグラフェンには多数の単原子が存在することをTEMで観察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
触媒反応過程を調べるために開発中のTEM試料ホルダー(最終年度で使用する予定)に問題が生じ、その修正・改良を行っていた。そのため、通常のTEMやSTEM観察は行ったが、高分解能観察に遅れが生じてしまった。来年度、早急に、電子線エネルギー損失分光法による分析も含め、高分解能な白金-カーボン触媒の観察を行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
TEM、STEMによる高分解能観察とともに、EELSを用いた分析も併用し、作製された触媒-カーボン担持体の構造を解析する。観察モードを使い分けながら、グラフェンの表面構造(ステップや欠陥)、触媒クラスター・原子の吸着サイトを明らかにしていく。 その後、合成条件を探索して得られた比表面積が大きな触媒とカーボンの複合体試料の触媒特性を調べる。TEMを用いた構造解析の結果と触媒特性評価の結果を比較し、触媒構造や電子状態が触媒特性に及ぼす影響や関係性を考察する。さらに、その得られた知見を合成にフィードバックさせ、より高活性な触媒材料を作製することを目指す。 さらに、触媒-カーボン担持体の複合体の触媒反応過程を解明するため、その場TEM観察も進めていく。温度制御やガス環境を形成できるTEM試料ホルダーの開発中で、これを用いて、反応中のグラフェン担持体の変化、触媒クラスター、原子の動的挙動を調べていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
最終年度で使用する予定で開発中のTEM試料ホルダーに問題が生じ、その修正・改良を行っていたため、高分解能観察に関して研究計画よりやや遅れが生じてしまった。そのため、今年度は、当初の予算より使用額が少なかった。次年度、早急に、遅れた分の観察・分析を行うため、今年度の未使用分を次年度に要求する。 今年度、計画よりやや遅れが生じた高分解能TEM・STEM観察のために、TEM観察試料を作製するための用品(グリッド、ピンセット、ケース等)を購入する予定である。また、観察・分析装置や試料作製装置を使用した際の機器使用料も課金される。
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