触媒は、従来から石油化学など各分野において、反応の促進という重要な役割を担ってきたが、近年の環境問題やエネルギー問題の解決策としても注目されている。しかし、貴金属触媒のように、資源として非常に希少で高価であるものあり、使用量を低減化させる技術などの研究・開発が進められている。本研究では、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、触媒の使用量低減のために微細化-ナノ粒子やクラスター化された触媒の構造や触媒反応の理解を深めることを目的とする。 触媒反応中の構造や挙動をその場観察するために開発していた、ガス雰囲気中で加熱が行えるTEM試料ホルダーの改良を行った。具体的には、試料近傍の圧力を測定する微小な真空計のコントローラを改良し、測定範囲を拡大させた。また、その圧力値に応じて、ピエゾ駆動のバルブを開閉できるように、制御ソフトウェアを導入した。これにより、今まで懸念事項であった、バルブを開ける際の急激な圧力上昇や観察中の圧力の不安定性を改善できるようになった。また、ex-situ用真空チャンバやガス供給システムを整備した。 その一方で、基礎的な知見を得るために、真空中でのグラフェン上の金属ナノ粒子の高分解能TEM観察も行った。それにより、グラフェン上でのナノ粒子の構造や挙動を原子レベルで捕らえることにも成功した。電子線照射という環境下ではあるが、グラフェンと金属原子の結合の強さにより、金属原子の挙動が異なることを明らかにした。
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