研究課題
本研究は、未だ確定していないリチウム2 次電池の正極材料であるコバルト酸リチウム(LiCoO2)のリチウム自己拡散係数を、放射性核種トレーサー8Li によりナノメータスケールでのリチウム拡散をその場(in-site)で直接測定することで、その拡散係数を直接測定することを目的とする。本研究により、汎用的にリチウム2 次電池材料のナノスケールでのリチウム拡散を非破壊的かつその場で測定する手法を確立する。本年度は、リチウム電池正極材料の1つであるスピネル型リチウム化合物LiMn2O4 (LMO)の測定ならびに解析を行った。LMO試料を350℃で加熱、JAEAタンデム加速器施設同位体分離装置より供給した8 keVの8Liビームを照射し測定を行った。解析の結果、1.8 ×10~(-12) cm~2毎秒の拡散係数が得られた。測定後のXRD分析では、LMOに由来するMn2O3と考えられる小ピークが観察されたため、得られた結果は暫定値であるが、本手法で、拡散係数を10~(-12) cm~2毎秒台まで測定可能であることを実験的に示すことができた。また、LiCoO2 (LCO)の測定を行い、結果として、試料温度280℃でアルファ線の時間強度変化は観測されず、同温度での拡散係数上限値として2 - 3 ×10~(-12) cm~2毎秒を得た。本研究により、リチウム2次電池の正極材料を拡散係数10~(-12) cm~2毎秒まで非破壊的かつその場で測定する手法を確立できた。得られた正極材料の拡散係数は、LMOに関しては暫定値であるが、間接的な電気化学的手法による拡散係数に比較して、桁で異なるものであり、リチウム電池内の拡散挙動が、電池動作時と異なることを示唆している。今後、本手法を拡張し、電位を印加して化学拡散係数を直接測定する手法を開拓する予定である。
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Nuclear Instruments and Methods B
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Doi:10.1016/j.nimb.2015.12.036
巻: 354 ページ: 297-300
Doi:10.1016/j.nimb.2014.10.031
http://www.kek.jp/ja/Research/IPNS/ShortLivedNucleiRandD/