研究課題
基盤研究(C)
生体内で遺伝情報を担うゲノムDNAは、大きさが数十ミクロンから数cmにもおよぶ巨大分子であり、細胞周期などにより著しく形態を変化させている。このような巨大DNA分子の高次構造特性が遺伝子機能と密接に関わっていると考えられる。本研究では、100kbpを超える長鎖DNAを対象として、1.1分子レベルでの“動的高次構造計測”により、種々の生理活性物質や核タンパク質を作用させた場合の長鎖DNAの折り畳み転移特性について網羅的実験を行い、発展として、2.ゲノムDNAを標的とす各種抗がん剤等の高次構造への影響と遺伝子機能との関連性を追究する。さらに、3.ゲノムDNAの高次構造制御と放射線損傷との関連性の追究を通じて、放射線併用化学療法にみられるような、抗がん剤によるDNAの構造変化と放射線感受性との相関を明らかにすることを目的とする。平成25年度は、以下の成果が得られた。・大腸菌の核様体タンパク質FisとDpsによるゲノムDNAの高次構造変化を調べた。Fisは対数増殖期、Dpsは定常期に多く発現することが知られており、本研究でもDNAの高次構造への作用の違いが認められた。本研究結果は、遺伝子発現制御における核様体タンパク質の役割についての新たな知見になることが期待される。・クロマチンの凝縮・脱凝縮と放射線感受性との関係を調べ、凝縮することが放射線による損傷を顕著に抑制することを明らかにした。・超音波照射によるDNA切断について、照射量と切断の程度を定量的に解析し、切断が起こらない照射量領域(閾値)の存在を確認した。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的の1、2、3、いずれも、新たな知見が得られており、順次成果としてまとめてきている。
目的として記載した1、2、3、のテーマに沿って引き続き研究を積み重ねていきたい。大きな目標として、DNAの高次構造制御法の確立を目指し、さらにその生物学的な側面の研究を発展させていきたい。
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