研究課題
生体内で遺伝情報を担うゲノムDNAは、大きさが数十ミクロンから数cmにもおよぶ巨大分子であり、細胞周期などにより著しく形態を変化させている。このような巨大DNA分子の高次構造特性が遺伝子機能と密接に関わっていると考えられる。本研究では、100kbpを超える長鎖DNAを対象として、1分子レベルでのDNAの動的な高次構造変化のリアルタイム計測・操作の実験手法を発展・活用して、1.ゲノムDNAを標的とする薬物の作用機序の解明、2.ゲノムDNAの高次構造と放射線や超音波等による損傷との関連性、さらに、3.環境条件等、DNAの高次構造転移に影響を与える要因にも注目して研究を進めた。その結果、以下のような成果が得られた。(1)直鎖型、分岐型、さらに環状構造を有するポリアミン誘導体によって引き起こされるDNAの高次高変化を蛍光顕微鏡による単一分子計測により調べた結果、DNAに対する凝縮力は、ポリアミン構造に依存して顕著に異なることを明らかにした。(2)アスコルビン酸によるDNA二重鎖切断の保護作用を、光励起・ガンマ線・超音波で比較した結果、光切断及びガンマ線に対しては二重鎖切断を抑制したが、超音波に対しては顕著な抑制作用は見られなかった。本結果を切断のメカニズムとも対応させて考察した。(3)エタノール溶液中でのDNAの高次構造変化を調べたところ、エタノール濃度に依存して、DNAの高次構造は、コイル→凝縮→コイル変化した。この結果をCD測定による二次構造変化と対応させて議論した。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件)
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