研究課題/領域番号 |
25390040
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
茂木 巖 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (50210084)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マイクロ渦流 / キラリティ / 磁気電気化学 / アミノ酸 / 磁気流体力学 / 電極界面 / キラル触媒 |
研究概要 |
磁場を印加しながら電析(磁気電析)を行うと,電流と磁場の相互作用でローレンツ力が働き,磁気流体力学的(MHD)効果により電極界面にμm~nmサイズの渦流が発生する.このような渦流が存在する下で電析が起こるとき,物質移動の対称性が破れ,キラルな界面が生成するものと考えられている.本研究では,磁気電析がどのような機構でキラル界面を生成するかを解明し,磁気電析によるキラル界面生成の新しい手法を開発することを目的としている.今年度は,下記に列挙するような研究成果が得られた. 1. 銅の磁気電析の実験条件(磁場,電位,電流,膜厚,電極径など)を幅広く変化させてキラル界面の生成条件を精査した.この結果から,マイクロMHD渦流とマクロMHD対流の相互作用により対称性の破れが起こり,キラル界面が生成する機構が明らかになった. 2. 得られた銅の磁気電析膜が分子キラリティを認識できるかどうかを確かめるため,磁気電析膜を電極に用いてアミノ酸や酒石酸などのキラル分子の電気化学反応を調べた.磁気電析膜は光学異性体に対して異なる電流値を示し,キラル認識を行っていることが分かった.こと結果は,キラルセンサーへの展開が期待される重要な成果である. 3. 新たな磁気電析法の開発として,電解セルを磁場中で回転する回転磁気電析法の実験を試みた.得られた磁気電析膜のキラリティを調べたところ,従来より高い不斉選択性を有することがわかり,この方法の有効性が確認された.また,回転がマイクロMHD渦流におよぼす効果を理論的に考察し,キラル界面生成機構の考察を行った.この成果は,科学雑誌Scietific Reportsに掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の研究計画とその達成度は以下のとおりである. 計画1. キラリティの発現条件を探索する.具体的には,銅の磁気電析を,磁場強度,電極電位,電解電流,膜厚,電極径などの実験条件を変化させて行い,キラリティの有無を確認する. (達成度1)キラル界面が生成す条件の探索に多くの時間を割くことになると予想していた.幸い,超伝導マグネットのマシンタイムが多めに得られ,精力的に実験を行った結果,比較的早い時期に,キラル生成条件を探すことができ,次のステップに移行することができた. 計画2. 銅の磁気電析膜を種々の条件で作製し,それらを電極に用いて,グルコースやアミノ酸,酒石酸などの電極反応を調べてみる. (達成度2)アラニンをはじめ,代表的なアミノ酸や,代表的なキラル分子である酒石酸において,キラル挙動が確認でき,スムーズに研究が進んだ.さらに,次年度以降に計画していた回転磁気電析の実験も試みることに成功し,不斉選択性の高いキラル界面形成の可能性を発見することができた.
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今後の研究の推進方策 |
磁気電析によるキラル界面形成の研究をさらに推進する. 1. 今年度試みた回転磁気電析の手法は,非常に有望なので,引き続き研究を継続する.回転方向や回転周波数が,キラル界面形成におよぼす効果を調べ,不斉選択性の高いキラル界面形成を目指す. 2. 磁気電析とは逆の現象である磁気電解エッチングを試み,キラル界面が可能かどうかを確かめる.より広い磁気電気化学的手法によるキラル界面形成の方法を開発し,キラル界面の高機能化を目指す. 3. 銅以外の金属でも,磁気電析,磁気電解エッチングを行い,より幅広い物質においてキラル界面形成を確認し,磁気電気化学キラリティが普遍的な現象であることを提示する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は,今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である.具体的には,電解セルを小型化し高額なキラル試薬の使用を少量化したことや,磁気電析条件の的確な探索により磁気電解セル,白金電極等の購入数を節約できたことによる. 次年度使用額は,平成26年度請求額とあわせ,平成26年度の研究遂行に使用する予定である.具体的には,25年度に試みた回転磁気電析装置の開発と改良に使用する予定である.
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