磁場を印加しながら電析(磁気電析)を行うと,電流と磁場の相互作用でローレンツ力が働き,磁気流体力学的(MHD)効果により電極界面にマイクロm~ナノmサイズのマイクロMHD渦流が発生する.このような渦流が電析界面にらせん転移を誘発し,キラルな界面が生成するものと考えられている.本研究では,磁気電析がキラル界面を生成する機構を解明し,キラル界面生成の新しい手法を開発することを目的としている.3年間で下記に列挙するような研究成果が得られた. 1.銅の磁気電析の実験条件を精査し,定電流モードでの磁気電析が界面キラリティを制御するのに適していることを見出した.アミノ酸の電極反応におけるキラル挙動の解析から,電析反応における律速過程とMHD渦流の方向によりキラリティの符号が決定されることが明らかとなった.この結果により,界面キラリティ制御の手法を確立できた. 2.新しい磁気電析の手法として,超電導マグネットの中で電解セルを回転させる回転磁気電析の装置を作製し,実験を試みた.これによりキラル選択性の高いキラル界面の作製に成功した. 3.磁気電析で観察されるキラル界面形成は,電流方向が逆になる電解エッチングにおいても可能ではないかと発想し,磁気電解エッチングを試み,キラル界面形成に成功した.これにより磁気電気化学プロセスによるキラリティ発現の普遍性を証明することができた.さらに,還元だけではなく酸化プロセスにおいてもキラル界面形成が可能になったので,酸化物などの種々の物質においてキラル界面を作製する道が開けた. 4. 本年度は,磁気電気化学キラリティへの添加剤の効果を研究した.塩化物イオンを添加剤に加えることで,磁気電析膜のキラリティが劇的に変化することを見出した.界面キラリティの新しい簡便な制御法として応用が期待できる.
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