液中レーザーアブレーションを用いてナノ粒子を作製すると,表面に様々な種類の保護剤を効率的に吸着させることが出来る。一方,このようなナノ粒子にレーザー光照射を行うと,表面に吸着した保護剤を脱離させることが出来ると考えられる。本研究課題の目的は,このような表面状態の変化によってもたらされるコロイド状ナノ粒子の分散-凝集状態の変化を,サブミクロン粒子やナノ粒子凝集体等のナノマイクロ構造の新規作製法として利用するための基本的な概念を構築することであった。 一昨年度までの研究により,上記に示したナノ粒子の「レーザー誘起」の存在を確認することが出来た。これにより,ナノ粒子から球状サブミクロン粒子を作製する際に必要なナノ粒子の凝集を,自発的な沈殿を抑制しながら制御することが可能になり,効率的な球状サブミクロン粒子の作製に利用できることが明らかになった。さらに,保護剤の種類がナノ粒子の初期の凝集状態,レーザー誘起凝集過程,生成した球状サブミクロン粒子の粒径,粒径分布に影響を与えることが明らかになった。 本年度はこのような保護剤の影響のさらなる解明に取り組んだ。具体的には,①NaBrを保護剤として用いた球状サブミクロン粒子の作製,②遠心分離による保護剤濃度の調整,に取り組んだ。①では,NaBrを用いた場合のレーザー誘起凝集過程は同様の塩類であるNaClを用いた場合とも異なり,保護剤として振る舞うBr-イオンとCl-イオンの吸着速度の違いであることが推定出来た。さらに,昨年度は初期の凝集構造によるものと推定していた,レーザー誘起凝集過程の違いが,保護剤の吸着速度で全て説明できることを示唆する結果が得られた。②では,保護剤濃度の調節と原料ナノ粒子の粒径が遠心分離によって行われたことにより,これまでよりも粒径分布の狭い球状サブミクロン粒子が得られた。
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