研究課題/領域番号 |
25390046
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
石黒 亮輔 独立行政法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 協力研究員 (40433312)
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研究分担者 |
柏谷 裕美 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 主任研究員 (60443181)
柏谷 聡 独立行政法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 首席研究員 (40356770)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | カイラルP波超伝導 / カイラルエッジ電流 / SQUID / 局所磁場計測 / 集束イオンビーム加工 / ナノSQUID / 弱接合 / 自発磁化 |
研究実績の概要 |
本年度は引き続きカイラルP波超伝導Sr2RuO4のカイラルエッジ電流検証のための局所磁場観測システムの開発とカイラルエッジ電流検証を行った。 トンネル接合型のAl-SQUIDの素子では昨年度開発したICP-RIEとななめ蒸着法を用いた手法を用いナノSQUIDの3×3の配列化を実現し、位置分解能のある局所磁場計測システムへと拡張した。またSr2RuO4の微小結晶は中心に穴の開いたサンプルも作製しSQUIDに設置し計測を行った。しかしながら、これまでのところMS理論で予測される大きさのエッジ電流は観測されていない。また、Sr2RuO4の微小結晶は集束イオンビームによって加工するため、サンプルとSQUIDの同時作製が可能となるため、集束イオンビームアシスト蒸着法を用いたタングステン薄膜による新しいタイプのSQUIDを開発した。このSQUIDについては特許出願をしている。 また、弱結合型のNb-SQIUDにSr2RuO4を集積したデバイスの特性については詳細に測定しエッジ電流による自発磁化の最大値を見積もった。まずSQUIDは電極幅が0.2um程度あるため、磁場を上げていくと容易にトラップが起きる。そのため、磁場の弱い原点付近の特性に集中した測定を行った。まずSQUIDのIcのプラス側とマイナス側の両者を測定し、その反転対称の関係から反転対称中心と、原点付近の周期を抽出した。2K程度から温度の下げていくと、周期は1.5Kを境に急激に増加を始める。これはSROが超伝導転移して、マイスナー効果を起こしていることに対応する。一方自発磁化に対応する反転対称中心は、1.5K以下においても温度依存性を示さないため、自発磁化の発生は観測できていない。シミュレーションと比較することにより、MS理論で予測される2桁下まで自発磁化の発生は否定できることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カイラルP波超伝導Sr2RuO4のカイラルエッジ電流の観測については、実際のデバイスにおける数値シミュレーションを行い較エッジ電流が存在した時に発生すると予測される自発磁化の大きさが予測より2桁以上小さいことまで示した。また、このエッジ電流検証のためのSQUIDによる局所磁場観測システムについては、Al-SQUID配列による位置分解能測定法,Nb-SQUIDによるTc以上からの計測法、さらにはFIBアシスト蒸着法によるW-SQUIDを使用した立体型を含めた任意の形のSQUIDによる計測など広く応用可能な手法の開発を進めながら、エッジ電流について自発磁化の有無の計測のみにとどまらない検証を進めることが出来ているため。
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今後の研究の推進方策 |
SQUIDで計測されるエッジ電流による自発磁化については引き続きシミュレーションと比較しながら検証を行っていく。穴あき試料などの試料形状についてもベストな形状を探っていく。自発磁化が観測されない理由の一つと考えられるカイラルドメインの存在についてSQUID配列による位置分解能を生かした計測によって検証を行う。またW-SQUIDは加工された試料の形状に合わせた形状にすることが可能なため、試料とSQUIDを最もよいく結合させることができるため、W-SQUIDを使用したエッジ電流検証も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の柏谷裕美氏の産休が予定よりのびたため、分担分の研究を次年度にまとめて行うこととしたため。また試料作製のスケジュールの予定を変更したため。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度に実施できなかった研究については、次年度に予定を変更し前年度に得られた研究成果をもとにより効率的な方法で次年度に予定していた研究と併せて実施する。
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